【開催報告】2014年度人間科学研究所年次総会(公開研究会「対人支援における大学と社会実践の連携を展望する」)ご報告
2015年1月17日(土)、立命館大学衣笠キャンパスにて、2014年度人間科学研究所年次総会が開催されました。この総会は、昨年に引き続き、文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「インクルーシブ社会に向けた支援の<学=実>連環型研究」プロジェクトの公開研究会としても位置づけられました。
本プロジェクトは、インクルーシブ社会に向けた総合的な対人支援の為の実践的研究を遂行する研究拠点を目指し、2015年度には最終年度(3年目)を迎えます。今年の公開研究会「対人支援における大学と社会実践の連携を展望する」では、本プロジェクトが対人支援のあり方として掲げる3つの側面、すなわち「予見的支援」「伴走的支援」「修復的支援」をテーマにした企画を行いました(第1部・第3部・第4部)。また、対人支援における国際連携に関わる研究を行っている研究者による全体討論企画(第5部)も行いました。
ポスターセッション(第2部)では、本プロジェクトメンバーにとどまらず、人間科学研究所に関わる様々な研究者が、人間科学に関する幅広いテーマでポスター発表を行いました。
当日はプロジェクトメンバーのほか、学内外の研究者、対人支援の実践に関わる実務家の方々、本学や他大学の学生、地域の方々など、のべ100人近い方々にお越しいただき、大盛況のうちに年次総会を終えることができました。
当日のプログラムやパンフレットはこちらのページからご覧いただけます。また、このページに載せている写真を含む当日の写真41枚を当研究所Facebookページに掲載しています。Facebookアカウントのない方でもご覧いただけますので、どうぞご高覧ください。
第1部 講演企画「高齢者支援活動場面の環境づくり―コミュニケーションの視点から」
第1部は、「インクルーシブ社会に向けた支援の<学=実>連環型研究」の予見的支援チームに関わる企画として、川村学園女子大学文学部の北原靖子教授を招聘し、ご講演をいただきました。なお、予見的支援チームについての詳細は、こちらをご覧ください(新しいウインドウまたはタブで開きます)。
北原教授は、2014年度は立命館大学人間科学研究所客員研究員としても研究に参画いただき、予見的支援チーム、特に高齢者支援に関わる研究者と、この間濃密な研究交流を行ってきました。「高齢者支援活動場面の環境づくり―コミュニケーションの視点から」と題されたこの講演では、高齢者支援での環境づくりについて、様々な世代を対象とした学びの「環境づくり」を研究されてきた専門家の立場から、貴重な助言を含む内容をお話いただきました。会場からの質問に笑顔で答えるなど、長丁場の公開研究会のスタートにふさわしい和やかな空気をつくってくださいました。
司会は予見的支援チームのリーダーである土田宣明教授(文学部)が務めました。当日は冷たい雨が時折降る寒い日だったにも関わらず、多くの参加者にお越しいただき、大盛況となりました。
第2部 ポスターセッション
第2部は、対人支援や人間科学に関する様々なテーマによるポスター発表が行われました。教員や若手研究者はもちろん、大学院生や実務家の発表を含む、23件のポスターが別会場(創思館303・304)に展示され、発表者と来場者のあいだで質疑や議論が活発に行われました。演題と抄録の一覧はこちらからご覧いただけます。
今年は例年と趣向を変え、昼休憩の時間を設けない代わりに、会場に軽食をご用意しました。発表者と来場者はサンドウィッチ等をつまみつつ、和やかな雰囲気で議論をすることができました。出入り自由としたこのセッションですが、90分のセッション時間を通して会場内にとどまった来場者も少なくありませんでした。
なお、これらのポスター発表の中には、2014年度人間科学研究所萌芽的研究プロジェクト助成プログラムに採択された5件の研究プロジェクトの発表が含まれています。これらのプロジェクトは、いずれも本年度、研究所が公募した競争的研究資金を獲得し、今後発展が期待される研究です。萌芽プロジェクトの採択一覧はこちらからご覧いただけます。
第3部 対談企画「修復と回復―対人援助の新しい課題」
「インクルーシブ社会に向けた支援の<学=実>連環型研究」には、対人支援の<実>を担う方、すなわち対人支援の現場で働く実践家の方々と数多く協働、連携しています。第3部は、まさに修復的支援の現場で実務に当たっておられる方と、修復的正義についての研究を進めている研究者との対談企画となりました。招聘したのは、なら法律事務所の菅原直美弁護士と、立命館大学法学部の森久智江准教授です。
菅原直美弁護士は、「刑事手続きは被疑者・被告人の生き直しの場である」をもとにして従来の情状弁護を超えた治療的司法(司法臨床や修復的司法も含む)のあり方を研究・実践中の、新進気鋭の弁護士です。この日は修復的司法の実務に当たってきた立場から、更生に向けた弁護のあり方などに関するお話をしてくださいました。森久智江准教授は、触法行為・犯罪行為を行った知的障害者や高齢者に対する社会的援助と刑事手続のあり方、障害のある少年の司法手続と処遇、修復的司法観と刑事責任の克服等の研究を行っている、こちらも新進気鋭の研究者です。今回は、オーストラリアにおける修復的司法の最新の事例についてお話しくださいました。
企画・進行は修復的支援チームのリーダーである中村正教授(産業社会学部)が務め、ライブ感溢れる対談企画となりました。なお、修復的支援チームの詳細については、こちらからご覧いただけます。
第4部 パネルディスカッション企画「伴走的支援の実際」
第4部は、伴走的支援チームからの企画でした。伴走的支援チームは、こちらでも紹介しているように、研究対象・研究手法が多岐に渡っています。この日はその中から3つの研究グループを代表する研究者がそれぞれ登壇し、伴走的支援の全体像を描き出そうとするパネルディスカッションを行いました。
最初に登壇したのは、障がいのある子どもとその家族の支援に取り組む谷晋二教授(文学部)です。伴走的支援チームのリーダーでもある谷教授は、伴走的支援のイメージを分かりやすく示すところからお話いただきました。
続いて自閉症スペクトラム児と家族の支援に取り組む荒木穂積教授(産業社会学部)が壇上に立ち、当研究所で継続的に行ってきた療育プログラムと発達チェックリストの研究蓄積と最新の成果について報告されました。
最後の報告者は、対人支援における「情報移行」について、これも当研究所で継続的に取り組まれてきた望月昭教授(文学部)でした。望月教授は地域の特別支援学校との連携例などを紹介しつつ、障害のある個人への継続的支援の在り方についてご報告されました。
この部の司会は竹内謙彰教授(産業社会学部)が務め、3人の報告後には竹内教授のコーディネートのもと、フロアを巻き込んだディスカッションが行われました。この部から来場した参加者もあり、引き続き多くの方が当研究所の研究成果報告に耳を傾けていました。
第5部 全体討論企画「対人支援における国際連携の可能性」
「インクルーシブ社会に向けた支援の<学=実>連環型研究」には、この日個別の企画を行った予見的支援チーム、伴走的支援チーム、修復的支援チームのほか、方法論チーム、基礎研究チームがあり、計5チームで構成されています。第5部は、それぞれのチームから、「対人支援における国際連携」に関わる研究を行っている研究者が登壇し、フロアを巻き込んだ全体討論企画を催しました。
予見的支援チームから吉田甫教授(文学部)、伴走的支援チームから谷晋二教授、修復的支援チームから村本邦子教授(応用人間科学研究科)がそれぞれ事例報告を行い、それを受けて方法論チームの松田亮三教授(産業社会学部)、基礎研究チームの小泉義之教授(先端総合学術研究科)がコメントを返すという流れで進行しました。司会はプロジェクトリーダーである稲葉光行教授(政策科学部)が担いました。
夕方遅い時間の企画にもかかわらず、午前中から継続して参加された方、午後の企画から参加された方など、会場には最後まで多くの来場者にお残りいただき、全5部の企画も大盛況に終わりました。
外部評価委員によるコメント
「インクルーシブ社会に向けた支援の<学=実>連環型研究」では、プロジェクトの活動や成果を中立的な立場から検証していただくため、有識者に外部評価委員をお願いしています。この日は、そのうちの一人である泉紳一郎氏(独立行政法人科学技術振興機構社会技術研究開発センター・センター長)にお越しいただき、最後に今回の企画や本プロジェクトについてのご意見を賜りました。泉氏は、社会的な課題の解決に向けてさまざまな分野の研究者や実践家が密接に連携している点を評価しつつ、その成果をより積極的に発信していくことの必要性を指摘されました。
研究所の情報発信について
本シンポジウムは、文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「インクルーシブ社会に向けた支援の<学=実>連環型研究」プロジェクトの一環として行われたものです。本シンポジウムのような研究所イベントのご案内は、当HP上で行っているほか、当研究所メールマガジンやFacebook、Twitterでも配信しております。それぞれ以下のページからご登録できますので、ご興味のある方はぜひご登録・フォロー・いいね!をお願いいたします。
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