テーマ② 社会的包摂に向けた予見的支援の研究
様々な立場に置かれた人々が、社会的活動への正統的参加者として位置づけられるために、物理的・社会的・情報的・制度的にどのような設定や支援が最も有効かを、組織的・系統的に検討しています。
具体的テーマには、1)高齢者(障がい者)支援研究、2)高次認知研究の2点が挙げられます。
1)高齢者(障がい者)支援研究では、加齢に伴い顕在化しやすい認知症と老年期うつの予防を主たる対象とします。高齢化社会を迎える中で、認知症やうつ予防の問題が注目を集めています。認知症やうつ予防には様々な取り組みがありますが、ひとつの方向性が「社会性の維持」です。ヴィゴツキーは、「高次精神機能は社会性の中で形成される」と述べました。高次精神機能の障害である認知症や老年期うつは、「社会性の維持」がキーワードとなる可能性があります。参加者が相互に社会的評価が得られる「場」はどのような構造と機能を必要とするか,大学という地域資源を活用して系統的に分析しています。さらに,EBPに基づく,障がい者支援を念頭においた実践も行っています。
2)高次認知研究では、加齢に伴い低下しやすい高次の精神機能の基礎的な研究を行います。具体的には、記憶、知覚、思考、感情、臨床方法論など、できる限り多角的に分析する予定です。
2014年度の成果報告
2014年度も,過年度から継続している地域高齢者を対象とした認知リハビリテーションの取り組みに加えて,主として下記の2点の研究を実施した。①認知リハビリテーションの継続効果について,これまで蓄積されたデータを分析した。②同志社女子大学・京都府立医科大学と共同して,高齢者うつ予防の取り組みに参加し,その介入の効果について,認知機能の変化から分析した。③高齢者の認知的特性について,実験的な研究を実施した。その他,過年度から継続している,高次精神機能の基礎研究について,諸側面から実験的検討を行った。日本心理学会,日本老年行動科学会を中心とした全国学会においてその成果を発表し,また国際学会において発表する予定である。
2013年度の成果報告
2013年度は,過年度から継続している地域高齢者を対象とした認知リハビリテーションの取り組みに加えて,主として下記の2点の研究を実施した。
①同志社女子大学・京都府立医科大学と共同して,高齢者うつ予防の取り組みに参加し,その介入の効果について,認知機能の変化から分析した。分析の結果,エピソード記憶に介入の効果が確認できた。
②高齢者の運動コントロールの特性について,実験的な研究を実施した。分析の結果,高齢者では運動性の神経興奮の影響が反応の抑制に強く影響することが確認された。その他,過年度から継続している,高次精神機能の基礎研究について,諸側面から実験的検討を行った。いずれも,日本発達心理学会,日本老年行動科学会を中心とした全国学会においてその成果を発表し,また国際学会において発表する予定である。
参加研究者
- 土田宣明 (文学部 教授)
- 東山篤規 (文学部 教授)
- 星野祐司 (文学部 教授)
- 八木保樹 (文学部 教授)
- 矢藤優子 (文学部 准教授)
- 岡本直子 (文学部 准教授)
- 大川一郎 (人間科学研究所 客員研究員 / 筑波大学大学院人間総合科学研究科 教授)
- 吉田甫 (立命館大学 客員研究員)
- 孫琴 (人間科学研究所 客員研究員)
- 都賀美有紀 (人間科学研究所 客員研究員)
- 村上嵩至 (文学部 助手)
- 多田美香里 (人間科学研究所 客員研究員 / 関西科学福祉大学社会福祉学部 准教授)
- 山崎校 (立命館大学 非常勤講師)
- 石川眞理子 (人間科学研究所 客員研究員)
- 坂口佳江 (人間科学研究所 客員研究員)
- 高橋伸子 (人間科学研究所 客員研究員)
- 北原靖子 (川村学園女子大学文学部 教授)
- 川那部隆司 (教育開発推進機構 准教授)
- 與久田巌 (人間科学研究所 客員研究員 / 大阪夕陽丘短期大学 准教授)
実績等
- 立命館土曜講座「双方向の高齢者支援―脳を鍛える「音読・計算活動」からみえてきたもの―」(2015年3月21日 講師:石川眞理子)
- 人間科学のフロント「社会的包摂に向けた予見的支援の研究」より高齢者支援の取り組みから」(2014年3月掲載 執筆者:土田宣明)
- 立命館土曜講座「高齢者支援の中で考える―支援する側・される側の変化―」(2014年3月15日 講師:孫琴)