【開催報告】アドバンスト研究セミナーVol.9 「青年期発達障害者の発達支援-見晴台学園大学の取り組みから-」
7月4日(土)、2015年度最初となる、人間科学研究所アドバンスト研究セミナーが開催されました。
今回のテーマは「青年期発達障害者の発達支援-見晴台学園大学の取り組みから-」で、産業社会学部の荒木穂積教授・竹内謙彰教授が企画したものです。2人は「インクルーシブ社会に向けた支援の<学=実>連環型研究」 の中の伴走的支援チームに属しており、このプロジェクトでも発達障害を持つ子どもの自閉症スペクトラム(ASD)児のための遊びを中心とする療育プログラムの開発などの研究を発展させてきました。
今回取り上げられた見晴台学園大学は、NPO法人学習障害児・者の教育と自立の保障をすすめる会を設立・経営主体とする、発達障害者の学習を保障する法定外の大学です。学園を巣立った若者たちのさらなる学びと人間的成長への願いに応え、学習困難をもつ発達障害のある青年の一人ひとりに寄り添い、安心して学びあえる大学づくりをめざし、2013年10月に設立されました。
四半世紀にわたり、学習に困難をかかえる子ども・青年たちの学びを保障し青春輝く学校として、多くの方々と手を取りあって学校づくり・授業づくりをすすめてきた学園である「見晴台学園」から、さらにそれに続く教育の場として設立された経緯があり、今回招聘した田中良三教授は、その学長であり、愛知県立大学の名誉教授でもいらっしゃいます。
今回のセミナーでは、まず田中教授より、見晴台学園および見晴台学園大学の目指すもの、実践内容、発達障害のある青年の育ちなどを報告いただきました。セミナーには、本学産業社会学部教員、社会学研究科や応用人間科学研究科の大学院生、人間科学研究所の客員研究員など青年期発達障害者の発達支援について学習・研究している研究者や、大学職員、学部生など多様な背景を持つ20名近くの方に参加いただきました。また、このセミナーの企画者でもある荒木穂積教授・竹内謙彰教授(産業社会学部)が人間科学研究所で継続して取り組んできた研究の一環で、自閉症スペクトラムの子どもたちの療育に関する研究のために立ち上げたグループである「あひるくらぶ」の保護者の方からもご参加がありました。
終了後、参加者からは「大学の講義で自立的自律・他立的自律の話を聞いたことを思い出し、「早期自立=就労」と自分の中で結びついた感じがした」「健常の子供よりも学びに時間も手間もかかる子供達が、なぜ健常児よりも早く世の中に出されるか、現状に諦めに近い気持ちでいましたが、見晴台学園大学の教授陣のような方々がいらっしゃることに大変心強く感じた」「「大学そのものが変わらなければならないのではないでしょうか」という問題提起に、これまで潜在的にあった関心を触発されたように感じた」など、学生や親、研究者といったそれぞれの立場から様々な声がありました。見晴台学園大学オープンキャンパスに参加するツアー、現地見学会のような企画への要望も出されるなど、今後の展開にも期待が持てそうです。
人間科学研究所アドバンスト研究セミナー 最近開催分のご報告
–Vol.4. 2014/6/5「社会福祉の国際比較研究の方法をめぐって -ソーシャルワークのレジーム類型を中心に-」
–Vol.5. 2014/6/28 「障害のある児童・生徒の継続的支援のための情報共有の仕組みについて」
–Vol.6. 2014/7/4 「規範理論と実証理論の対話に向けて-リバタリアン・パターナリズムを題材に-」
–Vol.7. 2014/7/17「供述分析法セミナー」–Vol.8. 2014/10/21「新たな支援の類型を求めて -伴走型支援をめぐって-」※今後の予定についてはHP上でお知らせいたします。