インターネット上の意識と再犯防止に向けた社会的受容のモデル化(社会的受容モデル化プロジェクト)

代表者: 高橋典寿   研究期間: 2024/4 -

背景

刑罰の懲役と禁錮を一本化し,拘禁刑を創設する改正刑法が2022年に成立し,2025年6月より施行が予定されている.特に,これまでの施設内処遇の方針が明示的に教育的な効果を目指すものへと変更される.よって,刑務所において,出所後の就業を積極的に目指す処遇が実施されることが予想される.一方で,受刑者が刑務所内で社会的にも評価される技術を獲得したとしても,受け入れを行う協力雇用主の増加や元受刑者に対する社会的な評価が変わらなければ,就業率の増加は見込めないだろう.しかし現状,内閣府(2018)の再犯防止に関する世論調査では一般人の50%が犯罪をした人の立ち直りに協力したくないと回答し,また村山(2022)でも,一見協力的にみえるものの,90%以上が拒否反応を示したことを示唆している.以上より,一般人の元犯罪者への受容的な態度を増加させる方略の確立が,今後の再犯率の低下のためには必要となる.

一般人の意識を検討する上で,再犯者への受容については「社会的望ましさ」バイアスが生じることが考えられる.そのために,SNSにおいてデータを収集することで「社会的望ましさ」バイアスを一定程度排除することが可能であると考えられる.一方でTwitterのようなネットワーク構造が明確なSNSにおいては,意見が集団内において極化するというエコーチェンバー効果が現れることが,先行研究で示されている(e.g. 神藤ら,2021).ネットワーク構造が明確なSNSであれば,集団構成員の中で所属集団を内集団として意識するが,ネットワーク構造が不明瞭,つまりオープンなSNSにおいてはその影響は明らかになっていない.

目的

以上より,本研究では,一般人の受刑者への受容-排斥意識についてモデル化することを目的とする.そのために,目的(1):オープンなSNS上での「受刑者」に関する映像のコメントとコメントに対するリプライを収集し,テキストマイニングにより検討を行う.これにより,受刑者の受容要因についても検討を行う.また目的(2): オープンなSNS上で「受刑者」に関する映像のコメントにおいて,どのような集団が形成されているか,またエコーチェンバー効果がみられるかを経時的な分析により検討し,オープンなSNSでの集団構造を数理モデルにより明らかにする.

参加研究者

  • 高橋典寿 (理工学部数理科学科・助教)
  • 中田友貴 (立命館大学R-GIRO・専門研究員)
  • 杉本菜月 (立命館大学大学院人間科学研究科・博士課程後期課程)
  • 工藤愛弓 (立命館大学大学院人間科学研究科・博士課程前期課程)

主な研究資金

2024年度 人間科学研究所 萌芽的プロジェクト研究助成プログラム


刊行物

立命館人間科学研究

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