教育・産業領域への司法面接の展開と制度的課題の検討

代表者: 若林宏輔 (総合心理学部 准教授)   研究期間: 2022/4 - 2023/3

心理的負担をかけず出来事について自由に報告を求める司法面接は、今や警察や児童相談所など司法・福祉領域で多く用いられ広く浸透している。その対象は主として被虐待・被害児童等が想定されてきたが、さらに加害が疑われる子ども、知的・発達障害を持つ子どもなど、特別な配慮を必要とする供述弱者も対象に含まれ、それら対象への展開・適用が盛んに研究されている(レビューとして仲, 2014;上宮ら, 2018)。また公認心理師カリキュラム「司法・犯罪分野に関する理論と支援の展開」にも司法面接の項目が加わっていることからも、公認心理師の活動が期待される5領域のうち、司法・福祉以外の医療・教育・産業領域の分野でも各種証言を司法面接による公正な手続き下で得る手法の展開可能性が予想される。制度や手続きによって生じる二次被害をできるだけ最小限にするという司法面接の姿勢は、司法・福祉領域に限らずどの領域においても不可欠である。
実際に、司法・福祉領域以外で公正な手続き下で得る客観的事実が必要とされる場面は多く、とくに本プロジェクトでは1)職場におけるハラスメント事案や2)教育現場におけるいじめ問題をとりあげる。当該場面では、被害者へのケアや加害者への対処はもちろん、記者会見・保護者会・第三者委員会など外部への説明が必要とされる場合があるため、ハラスメント事案やいじめ問題でも公正な手続きによる客観的事実の聞き取りが必要とされる。しかし、問題の対処に対するガイドラインや手続きはその団体・機関によって様々であるため、具体的な面接法は確立されていない。申請者らの調査では、企業・教育期間における事実調査の多くは、現場に長年関わりのある年長者の経験則の元、独自の手法で実施されることが慣習とされている。また、いじめ・ハラスメント被害などは、心理的負担が大きく供述が変化する危険性がある。そのため、当該場面においても公正な手続きの下、客観的事実の聴取法として司法面接の有効性を示す必要がある。
そこで本プロジェクトでは、他領域の諸問題に関して司法面接による支援と普及(適用)を目指し、実証的に検討することを目的とする。また、すでに司法面接が普及している司法・福祉領域でも課題は多いため、司法面接に関する基礎研究も視野にいれ検討する。
 

参加研究者

  • 若林 宏輔(総合心理学部・准教授)
  • 武田悠衣(人間科学研究科 博士課程後期課程2回生)
  • 藤本和希(人間科学研究科 博士課程前期課程1回生)

主な研究資金

2022年度 人間科学研究所 萌芽的プロジェクト研究助成プログラム


刊行物

立命館人間科学研究

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