坂道の遠辺の見かけの長さに及ぼすルーペ倍率の効果および坂道の見かけの縦断勾配に及ぼすルーペ倍率と単・両眼視の効果

代表者: 山本博樹   研究期間: 2022/4 - 2023/3

水平な坂道を双眼鏡で観察するとき歪み(知覚)が生じ、その縦断勾配(以下、勾配とする)は上り坂、幅員は遠大近小(逆遠近)、奥行きおよび視点からの距離は減少して見える。同じような歪みが、写真を凸レンズで拡大したときにも生じる(小笠原,1973)。双眼鏡やルーペを通して見える像は虚像(レンズの屈折によって実際とは異なる位置から光が来るように見える像)であり、その虚像は網膜上に結像することによって、知覚される(桑嶋,2010)。レンズ通した水平な坂道の虚像は、勾配では下り坂となりその歪みと矛盾し、幅員では遠大近小となりその歪みと同じ、奥行きでは増大するのでのその歪みと矛盾する。
 對梨(2020)は、正方面の勾配知覚に及ぼすルーペの倍率の効果を検討した。独立変数は3倍率(1:直接観察、2、4)、従属変数は刺激の水平調整値(角度)であった。水平な正方面の虚像は下り坂であった。その結果、倍率の効果が有意であった。4倍率は1倍率と2倍率よりも、上り坂に見えた。これは、レンズを通した見かけの勾配は、虚像の遠辺が近辺よりも大きくなるためであると説明された。 
目的 對梨(2020)から、①ルーペを通した水平な正方面の虚像の遠辺は、近辺よりも大きく(遠大近小)見えているのか、②虚像の勾配が影響を及ぼさなかったのは、奥行き手がかりが少ない単眼視観察であったためではないかについて、確認することである。なお、本研究は、老眼鏡やファイバースコープを通した作業などの見え方に関連し、対人援助を取り巻く諸課題の基礎研究に寄与することが期待される。

参加研究者

  • 山本博樹(総合心理学部・教授)
  • 對梨成一(衣笠総合研究機構・客員協力研究員)

主な研究資金

2022年度 人間科学研究所 萌芽的プロジェクト研究助成プログラム


刊行物

立命館人間科学研究

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