坂道の見かけの縦断勾配に及ぼす知覚学習(系列)とルーペ倍率の効果

代表者: 東山篤規   研究期間: 2021/4 -

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 例えば、机上のA4紙を双眼鏡で観察するとき、その大きさが拡大される他に、その水平な(縦断)勾配は上り坂、形は遠大近小(逆遠近)、前後の奥行きおよび視点からの距離は短縮して見える。われわれが双眼鏡やルーペを通して見える像は虚像(レンズの屈折によって実際とは異なる位置から光が来るように見える像)であり、その虚像は網膜上に結像することによって、知覚される(桑嶋,2010)。また、これらの歪みは、写真を凸レンズで拡大したときにも同様に生じる(小笠原,1973)。
 3次元刺激の拡大と写真などの2次元刺激の拡大の相違点は、それぞれ、縦断勾配の虚像では「下り方向に傾斜する」と「不変」、形の虚像とその網膜像の虚像では「遠大近小」と「遠小近大」、奥行きの虚像では「増加」と「不変」、形の歪みでは「光学的歪み」と「心理学的現象」が考えられる。ルーペを用い歪みを扱う本研究は、老眼鏡などの見え方にも関連し、対人援助を取り巻く諸課題の解決に寄与する基礎研究に相当する。
 ルーペを用いた對梨(2020)は、正方形面の縦断勾配知覚に及ぼすルーペの倍率の効果を検討した。独立変数は3倍率(1:直接、2、4)、従属変数は刺激の水平調整値(角度)であった。その結果、倍率の効果が有意であった。4倍率は1倍率と2倍率よりも、上り坂に見えた。
目的 上述したルーペ倍率の効果について、ルーペ倍率が増加するとき刺激である正方形面の虚像の縦断勾配は下り坂になり、その虚像の形は遠大近小(逆遠近)となる。これより、ルーペを通した見かけの縦断勾配は、虚像の縦断勾配をその手がかりとされ、虚像の形が手がかりとなっていると考えられる。本研究では、ルーペを通した正方形面の遠辺の見かけの長さが、近辺の長さよりも小さいこと、つまり、遠大近小(逆遠近)に見えていることを実証する。
計画 恒常法を用いて、近坂の長さと等しい見かけの遠坂の長さを各ルーペ倍率で求める。まず、予備測定で、7面刺激を倍率および参加者ごとに決定する。面刺激は正方形を含む台形で、近辺と高さが各44㎜で、遠辺の長さが異なるものを各13刺激作製する。1倍率では遠辺を2㎜刻みで34㎜から58㎜、4倍率では遠辺を2㎜刻みで20㎜から44㎜である。
 実験では、2倍率(1倍、4倍)×7刺激×20試行=計280試行を行う。参加者の半数ははじめに1倍率レンズを通して観察し、次に4倍率レンズを通して観察する。他の半数はこの逆順で観察する。各回答の半数は刺激の遠辺は近辺よりも長いかを問い、次に刺激の遠辺は近辺よりも短いかを問う。他の半数はこの逆順で行う。回答は「はい」か「いいえ」のどちらかである。面刺激は、実験者が適当にきって提示する。実験者は「はい」か「いいえ」の回答のあった刺激を分け、系列ごとに集計する。2倍率×4質問順の条件はすべての組合せを行い、提示する面刺激はランダムに提示する。
期待される成果・今後の展開 実験結果は、倍率の効果が予想され、4倍のときの台形面刺激の遠坂は1倍のときの台形面刺激の遠辺よりも小さいことが予想される。本実験と先の実験の結果から、ルーペによる見かけの縦断勾配は、その虚像の形である倒立台形が影響しており、また、虚像の縦断勾配は手がかりに利用されないといえる、ということが期待される。
 今後の展開について、①坂道の見かけの縦断勾配に及ぼす観察の効果を検討する。水平な正方形の虚像の縦断勾配は下り坂であるので、両眼視観察は、奥行き手がかりの増加によって、単眼視観察よりも下り坂に見えるのかを検討する。独立変数は、観察方法(単眼視:統制条件、両眼視)とルーペ倍率(1倍、4倍)とし、従属変数は、正方面の水平調整値(角度)とする。②坂道の見かけの奥行きに及ぼす面刺激と視線(光軸)の交差角の効果を検討する。ルーペや双眼鏡では、観察対象の虚像の奥行きは大きくなるが、その見かけの奥行きは小さくなる。これは、面刺激と視線の交差角が小さいためであることを検証する。独立変数は、視線と面刺激の交差角(10°、45°)とルーペ倍率(1倍:直接観察、4倍)とし、従属変数は、正方面の手前の幅を100としてときの奥行きの比率とする。

参加研究者

  • 東山篤規(総合心理学部・特任教授)
  • 對梨成一(衣笠総合研究機構・客員協力研究員)

主な研究資金

2021年度 人間科学研究所 萌芽的プロジェクト研究助成プログラム


刊行物

立命館人間科学研究

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