里親が困難に直面した際のサポートに関する調査
現在、日本では生まれた家で暮らしていない「社会的養育の子ども」が約45,000人存在する。
これまでは、これらの子どもの大多数が乳児院や児童養護施設などのいわゆる「施設養育」のもとで生活をしてきた。しかし、2016年の児童福祉法の改正、2017年の「新しい社会的養育ビジョン」によって里親等の家庭的養育を促進することが初めて明記された。具体的には、3歳未満は概ね5年以内、就学前の子どもについては概ね7年以内に里親委託率を75%とすることが数値目標として示された。
そのため、今後、新たな里親を多く募り、研修を経て登録や委託につなげていく必要がある。しかし、現在里親登録をしている里親の6割超が委託を受けていない里親である。さらに、一度委託を受けても養育開始後に「不調」になり、里子が委託解除になるケースではその後に里親としての活動をあきらめてしまうことが多い。当初は意欲を持って里親登録まで進んだ里親であっても、長期的に里親養育の担い手として活動を継続していくには困難に直面した際に手厚い支援が必要であるが、「不調」などの困難に直面した際に里親を支えるサポートが欠如していることはすでに里親を対象とした調査で明らかになっている(伊藤 2018)。
このような問題に対応するための組織としては、現在、全国里親会や地域の里親会、個人で里親の集まりを行うなど任意の里親支援活動は存在する。しかしながら、事業として里親支援を行っている組織や措置主体である自治体や国が出資した事業は現状存在しない。また、里親会等への登録は各里親の個人意思に任されている地域が大多数であり、里親会に加入していなければ困難に直面した際にサポートが得ることは難しいであろうし、措置機関である児童相談所が日常的に面接や家庭訪問を行うことも難しい現状がある。
これらの背景から、多大なコストと労力をかけてリクルートし、研修、登録をした里親が長期間活躍するためには、過去に「不調」を経験した里親への聞き取り調査を行い、より詳細なニーズを明らかにする必要があるだろう。
伊藤嘉余子(2018)「里親家庭における養育実態と 支援ニーズに関する調査研究事業」厚生労働省 子ども・子育て支援推進調査研究事業報告書
参加研究者
- 徳永祥子(衣笠総合研究機構 准教授)
主な研究資金
2020年度 人間科学研究所 萌芽的プロジェクト研究助成プログラム