アバターを用いた取調べが司法取引に対する一般市民の評価へ及ぼす影響

代表者: 中田 友貴   研究期間: 2020/4 - 2021/3

 取調べを行う人材として技能が身につけられることが必要とされ、また少子高齢化から人材が不足していくことが予想される中で、取調べへ新たなデジタル技術を用られていくことが今後考えられる。すでにビデオリンク方式が刑事司法制度で証人保護を目的として、少なからず用いられているが、VRやロボットを用いることで取調べにおける空間的な制約(e.g 離島や山間部、感染症に対する対策)や取調べ官の外見的な制約、主に児童における心的な負担に対する制約などを取り除くことができることが期待される。
対面でない取調べに関しては、決して多くはないものの一定の研究がなされている。たとえばGabbertら(2009)は自己実施面接という被面接者が記入するツールを作成し、対面と比較して同程度の有効性であることを示している。また平間ら(2019)は電話を用いた聴取における認知面接技法について検討しており、その有効性を示唆している。一方で、これらはあくまでも聴取時の有効性について検討したものであり、公判においてはどのような影響を及ぼすのかについては検討されていない。
 刑事司法改革における制度に関して、心理学的検討を行った結果、冤罪を防止する目的となる制度でも、刑事司法制度における一連の流れではむしろ冤罪を助長することが示されてきた(e.g. 中田・若林・サトウ, 2018)。つまり取調べとしての有用性の検討を行う必要性と同時に、その後の使用なども含めて検討を行う必要があるだろう。すなわち、刑事司法制度を考慮すると、取調べは捜査における情報収集だけでなく,裁判にて証拠として使用されることにも留意しなければならない。つまりアバターを用いた取調べは、情報収集においては有効であったとしても、公判においては評価されないなどの可能性がある。このような問題が生じる可能性が、現在のところほとんど検討されていないため,導入がされる前に実証的に問題点について示す必要がある。

参加研究者

  • 中田 友貴(OIC総合研究機構 専門研究員)

主な研究資金

2020年度 人間科学研究所 萌芽的プロジェクト研究助成プログラム


刊行物

立命館人間科学研究

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