更生保護対象者の自立を地域ぐるみで支える自立準備ホームの有用性に関する予備的研究
2011年より,従来からあった更生保護施設に加え,特定非営利活動法人や社会福祉法人等が住居の確保を困難とする者に住居を提供し,生活指導を行う場として自立準備ホームが誕生した1。さらに,2016年に施行された「再犯の防止等の推進に関する法律」では,刑務所出所者等の「職業」と「住居」を確保することで「円滑な社会復帰」を促すことを狙っている2。社会を明るくする運動では,地域社会が更生保護対象者に対する理解を示し「おかえり」と迎え入れる光景をコンセプトとするポスターが作成された。それにもかかわらず,利用者の背負う犯罪や非行をしたという過去を理由に更生保護関連施設の所在地の地域住民との間に摩擦が生まれ3,社会的排除につながることは珍しくない。加害者がスティグマを知覚することは更生の可能性を下げる4ことが示されている。また,従来の研究により,Good Lives Model5や ’making good’6 が提唱され,社会的文脈の中でおきる入居者の主観的な感覚の変容が犯罪や非行からの離脱に結びつくことが示唆されている。しかし,入居者の主観的感覚の変化と社会生活における地域との関わりとの相互関係を明らかにしようという研究は乏しく,法務省も言及していない。一方で,現状では,地域住民の支援を受け,多くの入居者の自立と地域定着に成功している自立準備ホームも存在する。そこで,そのような自立準備ホームと地域,および,地域と入所者の間にある入所者を支える日常生活中の“インフォーマルな”関係性を明らかにし,「おかえり」の実態を調査する必要がある。
参加研究者
- 川野健治(立命館大学総合心理学部・教授)
- 中村正(立命館大学産業社会部・教授)
- 齋藤絢子(立命館大学大学院人間科学研究科・博士後期課程1回生)
主な研究資金
2020年度 人間科学研究所 萌芽的プロジェクト研究助成プログラム