犯罪に関する規範意識・遵法意識についての探索的検討
2000年代前半を中心として,教育領域においては規範意識と社会的逸脱を深く関連付け,少年非行などについて公的機関(特に警察や教育機関)において報告されている(e.g. 秦,2000).またそれに伴い,初等教育や中等教育において非行防止を目的として,規範意識の教育が道徳などの授業において積極的に取り入れられている(c.f. 藤原,2018).
規範意識と社会的逸脱の関連についてはこれまで犯罪心理学や社会心理学領域においても少年を中心に検討されている(e.g. 加藤ら,2005).例えば朴ら(2012)は中学生の問題行動について調査を行い,集合的有能感が規範意識を媒介し,問題行動を抑制する一方で,環境により問題行動が増加することを示している.これらの研究では社会的絆理論や環境との関係を検討されていることが多い.
しかしそれらの研究において扱われている規範意識は初等教育や中等教育における逸脱行動,またはマナーやそれに類する比較的軽微な社会的逸脱行動が多くを占めている.そのため犯罪,特に成人の犯罪などとの関連は乖離している可能性がある.加えてそれらの規範とされているものは,発達段階に合わせて非常に数も少なく,実際の成人での犯罪に関わる法令と異なり,生活に密接したものといえる.そのため成人での規範意識と犯罪との関連については少年などの規範意識と逸脱行動と個なる可能性があり,検討を行う必要がある.
中学生や高校生と比較して,一般成人と近い立場にある大学生は,これまでの従来のマナーに関する研究など(牧ら,2010)などもされている.そこで従来のマナーや学校規範との比較を行うべく,本研究では大学生を対象としてインタビュー調査を行う.また一般人の認識については,SNS上のコメントから,非常に重大な犯罪から軽微な犯罪や犯罪に抵触しかねない行為までをキーワードとして取得し,テキストマイニングを用いることにより犯罪の違いによる認識を検討する.
参加研究者
- 中田 友貴(OIC総合研究機構 専門研究員)
主な研究資金
2022年度 人間科学研究所 萌芽的プロジェクト研究助成プログラム