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福島県をフィールドとしたライフ・トランジション・プロジェクト福島県をフィールドとしたライフ・トランジション研究

筆者: サトウタツヤ(総合心理学部教授) 執筆: 2017年3月

2011年3月11日、東日本大震災が起き、津波が東京電力福島第一原発を襲い、3月12日、水素爆発が発生した。福島中央テレビの情報カメラが捉えた福島第一原子力発電所1号機の水素爆発の瞬間の映像は、全国で放送されるまで4時間もの時間がかかったが、それでも全国ネットで流れ、日本国民に大きな衝撃を与えた。筆者の前職は福島大学行政社会学部助教授である。自分に何ができるのか、を考えたものの、直ぐに答えは思い浮かばず、全く迂闊なことに1年の月日が流れた。
地震発生から1年を過ぎて思いついたことは、福島大学の元同僚たちを立命館大学にお呼びして震災1年後の福島の状況を語ってもらう研究会を開催するということであった。このことをきっかけに私の周辺(サトゼミ)では、福島訪問の気運が高まり、学内の研究費やプロジェクト費を活用することで研究が盛んになり、ゼミ生や関係者の福島訪問は延べ200名以上となり、数編の卒業論文や学術論文が書かれただけでなく、専門職を得た人や生涯の伴侶に巡り会う人が続出した。
2012年6月頃からの3年間,筆者らは頻度のばらつきはあるものの2ヶ月に1度くらい京都府から福島県に足を運んだ。福島県在住の人々とのコミュニケーションを重ね,ラポールの形成を行った。木戸彩恵研究員(現・関西大学准教授)及びゼミ生と共に活動をしたのだが、最も深く関わることになったのは、福島市の農家グループである「ふくしま土壌くらぶ」の皆さん、福島市笹谷東部応急仮設住宅の住民の皆さんである(縁をとりもってくれたのが福島大学行政社会学部で社会福祉学を担当している鈴木典夫教授である)。
さて、私たちが最も深く関係をもつことができたのは福島県笹谷東部仮設住宅の皆さんである。特に2014年9月9日から18日の12日間と2015年9月14日から9月20日の7日間、それぞれ卒業論文を執筆する4回生(別の人物)が仮設住宅の部屋を1つ借りて住み込み型のフィールドワークを行ったことは特筆に値する。2015年度に行ったフィールドワークにおいては、参与観察に加えてインタビュー調査が行われた。KJ法を用いて検討を行ったところ、仮設住宅にお住まいの皆さんは、1)復興の課題が解決し浪江に帰れる日が来るのか、2)新しい土地の文化に合わせた生活ができるのか、3)仮設住宅で構築した繋がりを将来的にも持続することができるのかという3つの点が、気がかりであることが分かった。そしてこれは東京電力福島第一原発の事故を含む東日本大震災に特有の大きな課題であると思われる。これらの課題については引き続きフィールドワークを行い検討していきたい。

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