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災厄に向かう―災害と障害者・病者支援災厄に向かう―災害と障害者・病者支援・2012

筆者: 立岩真也(先端総合学術研究科・教授) 執筆: 2013年3月

プロジェクトの活動

 東日本大震災後、この事態の下で障害や病を有する人たちの生活・避難は依然困難であり、困難だからと見知らぬ地の福祉施設・病院等に送られ、死ぬまでそのままになってしまうという状況が現に起こりつつあります。一方で、そうした事態を防ぎ、住みたい場で住める条件を確保しようという動きも開始しています。私たちはこれらの組織に関わる人たちとこれまで25年以上の交流の実績を持っており、生活の様子を調査し、次の生活につなげる方途を共に探っています。
 当プロジェクトでは、有志の本学大学院生をはじめ学生が現地に出かけ、地元の民間組織・人のお手伝いをしながら様子をうかがっており、その一部は日本や韓国の学会他で報告しています。私たちの活動については、立命館大学グローバルCOEプログラム「生存学」創成拠点のウェブサイト(http://www.arsvi.com/)のトップページより「東日本大震災」というリンク先から「災害と障害者・病者:東日本大震災」(http://www.arsvi.com/d/d10.htm)ページをご参照ください。

ひとまず遠くでもできること

 研究者ができることは、被災地へ赴くだけではなく、「後に付いていって、拾っていくことだ」と思っています。
 具体的事例を挙げますと、「居住や介助等の制度、情報源・相談先についての情報を集め、ウェブサイトに掲載する」また、「停電時等、生活・生存のために不可欠な資源が得にくくなった時の状況・問題点を確認し、どのような対応があるべきなのかを検討し提言する」以上を含め、障害者・病者と震災全般に関わる情報を収集・発信・分析することが、私たちが遠くでもできることだと思います。
 私たちは2011年3月14日から立命館大学グローバルCOEプログラム「生存学」創成拠点のウェブサイト内に「東日本大震災」のページを作成しました(http://www.arsvi.com/d/d10.htm)。このサイト全体への年間ヒット数の累計は約1000万件に昇り、この活動は新聞等でも紹介され、震災関連の雑誌の特集号や単行書で私たち自身も紹介に努めております(これら報道や文献についての文章もサイト上にございます)。現在、サイトに掲載している関連頁(ファイル)は100を超え、その文字部分だけでも80メガバイトを超える規模です。特に関連報道の収集・公開は地味で地道な作業ではありますが、記録を残し、報道のあり方を含め、今後の対応のあり方を示すためにも必要であると考えています。
即時の(緊急の)対応・情報提供が第一だと考えた時期もありましたが、私たちができることは今は情報を拾って集めることを、止めることなく続けていくことだと思っています。現場の人は忙しくて記録することが難しいし、その忙しい仕事に専念していただきたくもあります。

医療機器と一緒に街で暮らすために

 2011年秋開催のシンポジウム報告・震災時のマニュアルを収録した『医療機器と一緒に街で暮らすために―シンポジウム報告書 震災と停電をどう生き延びたか 〜福島の在宅難病患者・人工呼吸器ユーザーらを招いて〜』は、入手依頼が殺到し、1000部印刷したものが2週間でほぼなくなりました。マニュアル「図解『おうち暮らし』¯医療機器を使って暮らすための停電時の備え」(PDFファイル)も含め、全文をサイト上で読めますので、どうぞご覧下さい(http://www.arsvi.com/b2010/1203gm.htm)。

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