えっせい

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朝三暮四?

筆者: 天田城介 執筆: 2007年

天田 城介 准教授
この数年、自分のために使える時間がほとんど、いや全くない。どうしたらこんなにも「自分の時間」を使うことができなくなるものなのかと考えてしまうほど、時間がない。こんな愚痴をここで書いても仕方がないし、美しくもない。とはいえ、自分の時間が全くないので、エッセイの格好の材料である普段読まない本を手に取ったり、あまり知られていない映画をみたり、異国の地を旅して何がしかの経験をするなど、全くできない。だからではないが、そもそもモノを書くのが苦手だからだろうか、ペンを手に取って改めてあれこれとアイデアを捻り出そうとしたが、面白そうなネタが驚くほど何も出てこない。全く何も浮かばないのだ。安易に引き受けたのがマズかった……とほほ、である。仕方がない。(この文章が他人の目にとまらないことを祈りつつ)私の「日々のやり過ごし方」について簡単に書くことにしよう。ネタがないというのは困ったものだ。
さて、この数年、酒の量が徐々に増えている。ただし、酒を飲むといっても、居酒屋で飲むのでも誰かと飲むのでもない。たいていは子どもたち3人を寝かしつけながら酒を飲む。子どもたちと一列横隊(私が隊長)となって布団に足を突っ込みつつほろ酔い気分で(時にはかなり酔っぱらいながら)本(絵本)を読み聞かせるのである。しかも、これが長いのだ(実際はそうたいした時間ではないのだが、私には途轍もなく長い時間に感じる)。途轍もなく長く感じるので、酔わなきゃつきあってられない気分にもなってイカンと思いつつも酒を余計に飲んでしまうのだ。ふだんじっくりと相手していないせいか、あるいは子どもはたいていそうなのか、3人がそれぞれ寝る前に「エホン、ヨンデェ〜」「えほんをよんでよ〜」「本を読んで!」としつこく言い寄ってくる。今までは「明日!」「今度!」などと適当に誤魔化していたが、あまりにもしつこいために毎回無碍に断ることもできず、とはいえ、やはりかなりの苦痛の時間でもあるので、やはり酒を飲んでしまう。そんなこんなで、いつの間にか寝室には(短時間で簡単に酔える)泡盛と芋焼酎の瓶が転がっている状態になってしまっている。「100万回生きた猫」も酒臭くなっている……
 こんなふうに酒を呷って飲む代償はデカイ。そのまま寝てしまうことが多々あるからだ。たいがいは数時間してムックと起きるのだが、それでは日々の「やるべきこと」が片づかない。そして、たいていいつも「週末に片づけよう」と自分に言い聞かせ日々をやり過ごす。だが、週末になれば「月末に片づけよう」となり、月末になれば「夏休みに……」「年末の大掃除に……」となっていく。かくして荒んだ生活が日々できあがっていくのだ。日々やり過ごすことで辛うじて?生活を保っているが、きっとはサル並みに「目先」のことしか考えていない私(とその子どもたち)にはいつかツケが回ってくるように思う。それを考えないように、また酒を飲む。この反復である(嗚呼)。


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