えっせい

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お酒の話。

筆者: 矢藤優子 執筆: 2007年

矢藤 優子准教授(写真:右)
「年月を重ねるごとに、素敵になってゆくものが3つある。アンティーク、ワイン、そして、あなた。」
かつて狙いをつけた年上男性の誕生日にこんな言葉を添えてワインをプレゼントしたことがあるくらい(惨敗しましたけど)、お酒の中でもとくにワインが大好きだ。自宅にセラーを置き、3ダースは常備している。「私にはワインの血が流れている。」と最初に言ったのは、かの女優さんではなくて私なのだ。そんな私のセラーに眠っている中で一番古いワインは、1929年のバニュルス。南仏ルーション地方のものだ。このボトルの中の液体が、第2次世界大戦を乗り越えて、80年ものあいだ人類の歴史を見守ってきたと思うとなんとも感慨深い。入手困難だったこの逸品をだれかに自慢したくて、宋衛門町にあるワインバーで、知り合いのソムリエにさりげなく話題を持ちかけてみた。「1929年のバニュルスがあるんだけど、いつか飲むとしたらどんな料理を合わせたらよいかしら。」あなたも味見したいなら、このお店で開けても良くってよ。うふふ。彼はカウンターの向こうで水仕事の手を止めることもなく答えた。
「それなら、コロッケに合うよ。」
…80年の人類の歴史を見守ってきたワインが、なんでよりによってコロッケとマリアージュなのよ?しばらく考えて、くやしかったけれど、妙に納得した。そうか、熟成に熟成を重ねた果汁は、結局「ウスターソース」になるということなのか。80年も経っているから、中濃ソースぐらいになっているにちがいない。
古けりゃいいってもんでもない。私には、男性を見る目もなければワインを選ぶ目もないことがようやくわかった。


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