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雪の値段、その2(回答編)

筆者: 徳田完二 執筆: 2005年

 「雪の値段、その1(問題編)」の答えを発表しよう。問題は以下のようなものであった。
【問題】札幌一円に雪が降って、札幌市道をくまなく除雪すると、一晩の除雪費はおよそいくらになると思うか、次の選択肢の中から選びなさい。
   ①五百万円  ②一千万円  ③五千万円  ④一億円
 答えは④である。
 札幌市道に降り積もった雪を残らず除雪すると、たった一晩でおよそ「いちおくえん(!)」かかる勘定になるらしい。一冬のうち、延べ九十日分の「札幌全域総除雪」に相当する九十億円ほどが、毎年の除排雪費として予算化されているようである。「除排雪」とは、「除雪」および「排雪」という意味であり、除雪とはブルドーザなどで雪を道の両側(つまり歩道のあたり)に単に押しのけることを言い、排雪とは歩道のあたりにうずたかく積もった雪をダンプに積んで雪捨て場に運ぶことを言う。
 北海道の道が広く作られているのは、土地が余っているからではなく、除雪で押しのけられた雪ためのスペース確保がねらいなのである。歩道が雪で埋まると、歩道用の小型除雪機で歩く場所を作ることもある。しかし、除雪しない歩道もあって、そういうところでは人々が車道の縁を転ばぬように気をつけながら歩いていたりする。いずれにしても、足が雪に埋もれるようなことはほとんどないので、冬でも長靴で通勤するような人はまず見かけない(もしいれば、「いったい、どんな田舎から出てきたのか?!」といぶかられる)。
 郊外のあちこちには市の指定した雪捨て場があって、各地域から集められた雪で巨大な山ができる。何台ものダンプ、ブルドーザ、パワーショベルが作業をし、徐々に高さを増していく雪山は、遠目に見ると、バベルの塔の建設現場を彷彿とさせる。ダンプが捨てた雪をブルドーザがならすので、雪は固くかたく締まり、すっかり解け切るのは夏になってから、という雪捨て場もある。
放っておけばいつかは融ける雪の処理に九十億円とは、と思われる向きもあるだろう。しかし、雪の季節には仕事が極端に減る土建業者が、雪のおかげで食っていけるという面もあるのだから、雪が経済に与える影響は単純ではない。


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