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スクールカウンセラー

筆者: 野田正人 執筆: 2004年

 立命館大学では、ほとんどの文章を西暦で表記しますから、いつもお役所文書の平成との読み替えに苦労します。ともかく今年が平成17年だとしますと、か ねてから文科省は、この春にはスクールカウンセラー(SC)を全国のすべての中学校に配置するとの方針を表明していたはずです。
 私のかかわっている滋賀県は、この文科省の方針を尊重して、県の数値目標としても、平成17年に県下の全中学校にあたる約100校にSCを配置することとしていて、ちょうどこの時期、関係者はその作業を進めているところです。
 私自身はこのスクールカウンセラーにかかわって、実にいろんな経験をさせていただきました。現在、滋賀県の臨床心理士会で会長職と兼任でSCのコーディネーターやスーパーバイザーをさせてもらっているのも、平成7年のSCに就任したことが発端でした。
 その前年に愛知県で発生した大きないじめ自死事件も手伝って、それまでくすぶっていたSCの導入が一気に加速し、私の住む滋賀県でもSC配置が実現する こととなりました。ちょうどこの時期、全国に府県単位の臨床心理士会が設立されていた時期とも重なり、臨床心理士の世界も対応に追われました。この時には SCは調査研究として位置づけられ、配置数も府県に3校だけということで、人を選んで配置するということができました。 その後、10校、30校という調 子で配置校が増え、予算に関しても臨床心理士の資格取得者のほかに、準ずるものという枠で資格未取得者が安い時間給で配置されました。
 それでも地域によってはSCの基準を満たす者が足りないという状況で、立命館大学もそうですが、臨床心理士の受験資格の取れる課程をもった大学院が各地に開設され、受験生により心理ブームが到来しました。
 この傾向が今後どのようになるのかは分かりませんが、基本的な心理ブームはまだまだ続きそうです。しかし、このことに対する批判も根強く、スクールカウ ンセラーに関しては、量から質の時代に入ったといって過言ではないと思います。その一方で、専門的な教育歴とあわせて経験と成長が必要な分野であり、ベテ ランを促成栽培できるはずもないのですから、ここ当分は全体の質の向上と、淘汰が行われるのではないかと感じています。
 高い税金をつかっている事業なのですから、それに見合うきちんとした水準の仕事をする。それが全うできるかどうかが、この春真剣に問われることになりそうです。


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