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障害のある生徒のキャリア支援プロジェクト「援助つき『できる』」の拡大と「褒める」

筆者: 土田菜穂(総合心理学部 助手) 執筆: 2018年12月

「できる」と「褒める」の関係

障害のある個人の「援助付き『できる』」を拡大すること,すなわち「〇〇さんは,こんな援助があれば△△ができる」を表現して発信することが本プロジェクトの目的です。前回の話題提供(2016年12月の人間科学のフロント)でも述べましたが,「援助付き『できる』」は、いかに援助する側が「こんな援助あれば」の「援助」を見つけ出すかがポイントとなります。その「援助」は,行動に先行する手立てやヒントだけではありません。行動の後の「対応」も含まれています。「褒めること」もその1つです。私が研究のフィールドとしている学校現場では,教員の褒める行動が増加することによって,子どもたちの授業参加率が上がったり,適切な行動が増えたりするなど良い結果が得られています (Floress, Beschta, Meyer, & Reinke, 2017) 。「援助付き『できる』」が成立するためには,子どもたちが褒められる環境を保障することが重要なのです。

褒め方にもコツが必要

効果的な褒め方とはどんなものでしょうか。その1つが“行動を具体的に述べながら褒めること”です。「すごい!!」「いいね!!」という端的な言葉で褒めることも十分に効果はあります。さらに,子どもの行動を具体的に褒めることが(たとえば,「〇〇さん,元気よく大きな声であいさつできたね」「みんなが協力して準備できたからいつもより早かったね」など),子どもの適切な行動の増加に効果があることが報告されています (たとえば,Chalk & Bizo, 2004, Sutherland, Wehby, & Copeland, 2000)。
また,適切な行動が増加した「あと」も重要です。たとえば,子どもがご飯を食べたあとに自分で食器を運んで片づけのお手伝いをしました。それに対して母親が「ありがとう。片づけを手伝ってくれて助かったわ」と褒めたことで,それ以降すすんでお手伝いをするようになりました。さらに,母親からの褒め言葉がなくても,自然な随伴性でお手伝いをする行動を強化・維持されるようになったとします。このような場合,自然な随伴性で維持されているからといって,褒めることは不要と言えるでしょうか。毎日でなくてもお手伝いをしたことに対して,「今日の食器の拭き方はプロ級だ」と褒めることで,お手伝いをすることが維持されるかもしれないし,さらに新たなお手伝いをするようになるかもしれません。そうやって子どもたちの行動に対して積極的に褒め続けることが,「援助つき『できる』」を見つける方略になると考えています。

「褒める」を増やすには?

このように褒めることの重要性は知られています。学校現場で子どもたちは「常に褒められる」環境にいるでしょうか。そんなことはありません。むしろ学校現場では注意や叱責が多いという研究結果も見られます。“実際に子どもたちはどのくらい学校現場で褒められているのか”“どうやったら子どもたちが「常に褒められる」環境でパフォーマンスを向上させることができるのか”をテーマに研究を進めています。

引用文献

  • Chalk, K., & Bizo, L. A. (2004) Specific praise improves on-task behavior and numeracy enjoyment: A study of year four pupils engaged in numeracy hour. Educational Psychology in Practice, 20, 335-351.
  • Floress, M. T., Beschta, S. L., Meyer, K. L., & Reinke, W. M. (2017). Praise research trends and future directions: Characteristics and teacher training. Behavioral Disorders, 43, 227–243.
  • Sutherland, K. S., Wehby, J. H., & Copeland, S. R. (2000). Effect of varying rates of behavior-specific praise on the on-task behavior of students with EBD. Journal of Emotional and Behavioral Disorders, 8, 2-8

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