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概要
 

CEHSOCプロジェクトとは

2005年10月16日
CEHSOCプロジェクト代表 松田亮三

はじめに ― CEHSOCプロジェクトの概要

医療と福祉といった対人サービスにおいていかに患者・利用者の権限を高めるかは、日本だけでなく多くの国で共通の課題となっています。日本においては、この10年間で患者の権利についての多くの議論がなされるとともに、臨床の場におけるコミュニケーションや意思決定のあり方はもちろんのこと、患者・利用者からの医療・福祉政策への参画や地域住民からの病院経営への参画が課題とされるようになってきました。

このような中で、立命館大学人間科学研究所では、医療と福祉という領域における対人援助のあり方を考える際に、患者・利用者さらには地域レベルでの力量形成と権限の強化(エンパワーメント)をどのようにすすめるかを検討するプロジェクト、「医療・福祉における地域・住民エンパワーメントプロジェクト(Citizen& Community Empowerment in Health and Social Care Project,CEHSOC Project))を2005年度から立ち上げました。

CEHSOCプロジェクトの特徴は、まず対人援助を受ける人々の力量形成と権限の強化(エンパワーメント)にどのような要因が関わっているかを多面的に明らかにしようとすることです。対人援助においてはともすれば援助を行う主体に情報、知識、資金、物品などさまざまな資源が集中しています。しかも、援助を行う主体が援助を受ける側の完全な代理人として振舞うことは、価値観の多様性、援助者をとりまくさまざまな経済的・非経済的インセンティブからみて必ずしも期待できません。そのため、援助を受ける人々がどのような援助を望みどのように援助を受け取っていくかという判断力を強め、援助者と交渉し実現していく権限の強化を行っていくことが必要と考えられます。このような臨床場面における権限の強化について、それに関わる多様な要因―リテラシー、メディアによる情報提供、臨床的コミュニケーション能力、規制や経済的インセンティブなど―を探る中で、患者・利用者のエンパワーメントに接近していきます。

この場合に、対人援助のあり方を医療、福祉という具体的な領域に限定し、対人援助のあり方をそれぞれの領域の制度的また援助関係の特徴をふまえながら検討いたします。対人援助は医療、福祉、教育など多くの場で行われますが、それぞれの援助が行われる場や制度は独特の特徴をもっており、それらがさまざまなルートを通じて対人援助のあり方に影響すると考えられます。そのため、対人援助のあり方を援助の場や援助の背景となる制度の特徴をふまえながら探求していきます。

さらに、制度(マクロの水準)と臨床(ミクロの水準)を媒介するさまざまな組織のあり方(メゾの水準)について、医療・福祉サービスを提供する主体の経営・運営のあり方やサービス利用の周辺において患者・利用者をさまざまな意味で支える組織のあり方、地域社会のあり方、など多様な組織の存在とそのあり方を視野にいれて検討します。 このような研究課題は非常に大きなものではありますが、2005年度においては、以下の5つの研究グループ(RGs)を設けて研究をすすめております。

  • 制度RG:医療・福祉エンパワーメントを促す社会制度に関する研究
  • 組織RG:非営利・協同組織における組合員(会員)の「参加」の研究
  • 地域高齢者RG:援助拒否・孤立・潜在化する地域高齢者のエンパワーメントに関する研究
  • 男性介護RG:男性介護に関わるエンパワーメント・プログラムの開発研究
  • 妊娠・出産RG:妊娠・出産に関わる当事者エンパワーメントの研究

本プロジェクトの主な資金は、日本生活協同組合連合会医療部会からの奨学寄附金によります。本プロジェクトは、文部科学省オープン・リサーチ・センター整備事業「臨床人間科学の構築」プロジェクトの一部(エンパワメント系医療福祉チーム)として位置づけられています。

定例研究会の位置づけ

本プロジェクトでは上記のような広範な課題を視野にいれつつ、各研究グループの共通情報基盤として定例研究会を位置づけ、およそ月に1度の頻度で開催していきます。

定例研究会は、各研究グループの共通課題を検討・交流する場であるとともに、プロジェクト自体が開かれたものとなるように、プロジェクト外との交流を行っていく場として位置づけます。そのため、内外の研究者、患者・利用者の支援を実施している諸組織、医療・福祉サービス提供機関の経営・運営に従事されている方、医療・福祉のサービス提供を最前線で行われている臨床家、医療・福祉の政策形成に関わっていらっしゃる方など、多様な方々をお招きして、プロジェクトの課題に関連したテーマでご報告いただきます。

また、本プロジェクトは、オープン・リサーチ・センター事業の一部でもあることからみられますように、定例研究会が医療・福祉における地域・住民エンパワーメントにつながる幅広いネットワークを創出する契機になればと考えております。



   

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