FROM JAPANESE RESEARCHER

原井 宏明 氏 (菊池病院)
 「援助者、被援助者へのヘルスケアサービスと制度の統合」


 人類の出現以来、我々は様々な問題に悩まされてきた。人が読み書きをするようになってからは薬や会話療法、癒しの技術が記述され、発展しているが、これらに対する要求、すなわちヘルスケアサービスへの要求はとても幅広く、我々は常に新しい疾患や新しい理論、新しい治療法、新しい職業、新しい組織を作り続けてきた。社会心理的な介入の面においてもまた、これは言える。20世紀に入って精神分析が生まれ、何十年も支持されてきた。21世紀に入ってからも心理療法の流派は増え続けている。これは一般メディアや学者には良いニュースと考えられているが、「対人援助学」でいう被援助者にとっては必ずしも良いニュースとはいえないのだ。様々な治療法のなかから最適の治療法を選ぶには、負担がかかる。そしてこれは専門家にとっても同じことだ。一般的に新しい治療法はより複雑であり、その治療法を適切に提供するには何時間もの研修を受ける必要があるからである。
 1990年代以降、医療提供の状況は急激に変化している。まず、医療費の抑制が必要とされ、次に、医療情報学における情報革命が起こった。第三に、医療サービスには様々なものがあるとの認識が公に高まってきている。 我々は社会心理的介入の影響をあいまいにしか認識していない。明白なのは、新しいものが単に増殖しても、それはもはや受け入れられないということである。現在入手可能な証拠によると、疾患や理論、治療法、職業、組織を完全に合わせても、上記の3つの変化に影響を受けた公共の利益には反しているということだ。そうなると、自然淘汰が起こらなければならないが、その淘汰の力は自然からではなく社会制度から来ることにはなる。
 ヘルスケアサービスの統合は、この選択肢に残るための取り組みである。統合が意味するところは 1)疾患を機能的に同等の問題と統合する 2)異なった治療法や専門家を機能的に同等のサービスと統合する、ということである。治療法や理論については、結果を重視した経験論に基づいて最適なもの選ぶべきだ。情報技術とコミュニケーション技能を駆使して個人の価値体系を探究する費用対効果分析は、この目標を達成する上で欠かせないツールとなる。そして、この統合は大きく社会制度に働きかけながら行うべきなのだ。
 私は、立命館大学ヒューマンサービスリサーチセンターがこの統合の中心として機能することを望み、またそうなると確信している。