03 アーカイビングチーム

リーダー:サトウタツヤ(文学部教授)
 広い意味での対人援助の現場において、個人情報を扱う機会が増えてきました。
 個人から見ると、自分のことを良く知った上で、いろいろなことをしてほしいという気持ちがある一方で、自分の情報が知らない間に漏れていたら困るということがあります。
 このチームでは、最も重要な個人に関する情報の取り扱いに関する、実務・倫理・保存方法について扱います。
 また、日本では、公文書・私文書の保管が手薄であることは良く知られた事実です。先日、日本の外務省が日米密約に文書を破棄していた可能性が指摘されましたが、このことに限らず日本の組織は文書を大事にしない/都合の悪い文書は破棄する、という可能性があるようです。私たちは文書・情報の信頼ある保管機能(アーカイブ)の構築を目指します。大学というサスティナブルな機関だからこそ、個人の歴史、当事者団体などの機関の歴史を責任もって保存することが可能であり、その方法論や倫理的検討について研究をしていきます。
チーム参加メンバー 所 属 ・ 職 名 専 門
佐藤 達哉 文学部・教授 社会心理学・心理学史、実験系心理学、教育・社会系心理学
矢藤 優子 文学部・准教授 比較発達心理学
大谷 いづみ 産業社会学部・教授  
立岩 真也 先端総合学術研究科・教授 社会学、障害者福祉
松原 洋子 先端総合学術研究科・教授 科学史、生命倫理、科学技術社会論
渡辺 公三 先端総合学術研究科・教授 アフリカ論・人類学史、文化人
天田 城介 先端総合学術研究科・准教授  
朝野 浩 教職教育推進機構・教授  

2010年度活動報告
 対人援助の現場における個人情報の扱いについて、多様な文脈から検討を行った。
 特に、障害児・者の就労に関する継続的支援のあり方について、全国規模の調査を行うチームに参加し、この問題に関する現状と、個々の団体・機関が情報蓄積と移行について、どのように考えているのかの検討を行った。このほか、人類学・科学史・社会学などの文脈における個人に関する情報の取り扱いに関する倫理について検討を行った。これに関連して、戦前日本の傷痍軍人団体に関する調査を行い、資料を収集し、また戦後日本の患者・障害者団体の発行物を収集保存する方法論を構築している。
 さらに、具体的な保存に関して学内に保存・貯蓄システムを構築する方途を探っている。
 なお、資料保存の前提となる患者・障害者のあり方について心理学の方法論によって記述するための方法論開拓、特に質的研究法の開拓も行っている。

2011年度活動報告
 本グループでは、様々な種類の情報の保全と整理を行うことで、人間科学の研究と実践を充実させることを目的とする。今年度は、引き続き、個人や組織の情報蓄積・管理・移行・必要な可視化・情報倫理の構築などを包括的に行った。また、当事者団体の資料の保管・整理はその最も大きな成果の一つである。
 さらに、情報金庫の構築、つまり情報蓄積、管理、移行方法の開発を行った。冤罪事件における供述調書の可視化や難病と震災に関するデータの可視化を行うための三次元キューブの開発を進めており、ユーザにとって使いやすい改訂版を開発した。
 実践にあたり最も大きな問題の一つは、当人にとって不利益かもしれない情報(病歴・障害歴など)をどのように扱うのか、ことにあり、「情報的正義」という観点から議論を行った。これまでは情報倫理と称してきたが、情報正義という観点から資料・情報保存について考えることの有効性について考えてきた。