01 高齢者支援チーム

リーダー:土田 宣明(文学部教授)
 ヴィゴツキーは「高次精神機能は社会性の中で形成される」と述べています。この言葉を借りるならば、高齢者の高いレベルの認知機能も、社会性の中で維持・発展されるはずです。高齢者支援チームの取り組みにおいては、参加者が「社会性を維持」し、相互に社会的評価が得られる「場」にはどのような構造と機能を必要とするのかを検討しています。そして「今できる」役割の創造に向けた過不足のない支援のありかたについて、できるだけ多角的に分析したいと考えています。
このような目標のもと、取り組みの大きな柱は、従来から実践してきている音読計算活動を行う学習療法の取り組みです。大学を地域資源として、地域高齢者に公開した、学習療法の取り組みを4年間継続的に実施しています(5年目に入ります)。この取り組みそのものの有効性は京都新聞、NHKニュースでも取り上げられています。さらに、大学周辺の学区からの要請で、大将軍、衣笠、楽只、紫明、中川、小野郷、雲ヶ畑の6学区にまでその活動の範囲を拡大しています。地域からの要請に応えての、サポーターの育成、定期的な勉強会や実践報告会の活動などを日本老年行動科学会京都支部と連携して行っているところです。
チーム参加メンバー 所 属 ・ 職 名 専 門
土田 宣明 文学部・教授 発達心理学、老化、行動調節、認知機能
吉田 甫 文学部・教授 学習心理学、発達心理学、教育心理学
大川一郎 筑波大学大学院人間総合科学研究科・教授  

2010年度活動報告
 高齢者支援チームでは,これまでの研究プロジェクトを発展的に継続させた高齢者支援活動を行った。具体的には、大学周辺の地域高齢者を対象とした認知リハビリテーション活動である。この活動に参加した地域高齢者は87名(男性15名,女性72名)であった。この実践を通して、音読・計算を主たる媒介とした活動の、認知機能への維持・改善への効果を検討し、複数の学会においてその成果を発表した。
 また、今年度は特に、京都市左京区の地域包括支援センターと共同して、音読・計算活動を媒介とした取り組みの、地域への普及を試みた。これは、効果が期待できるものを、より多くの人々・地域に拡げるための広報支援的活動である。左京区が開催するイベント(「左京区ふれあいまつり」)にも積極的に参加して,認知リハビリテーションの実演を行った。

2011年度活動報告
このプロジェクトでは,今年度も過年度に引き続き,大学を実践の場として高齢者支援を行った。具体的には,大学周辺の地域高齢者を対象とした認知リハビリテーション活動である。この実践を通して,音読・計算を主たる媒介としたコミュニケーション活動の,認知機能への維持・改善への効果を検討し,複数の学会においてその成果を発表した。さらに,京都市北区役所,京都市左京区地域介護予防推進センター等と共同して,この取り組みの地域への普及を試みた。2012年2月26日には公開シンポジウムを行い,その研究成果を広く一般に公開した。