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研究会などの催し
 
 

国際ワークショップ

「社会ネットワーク・近隣社会と健康との関係を探る」

1.イチロー・カワチ(ハーバード大学公衆衛生大学院 教授)
「近隣社会・社会関係資本・健康」

2.松田茂樹(第一生命経済研究所 ライフデザイン研究本部 副主任研究員)
「子育てネットワークと母親の健康」

3.中谷友樹(立命館大学文学部 助教授)
「日本における健康の地理的格差について」

4.アンソニー・フィールディング(サセックス大学地学部 教授/立命館大学客員教授)
「近隣社会の日英比較」


2006年10月27日(於立命館大学歴史都市防災研究センターカンファレンスホール)

2006年10月27日、CEHSOCプロジェクトは、立命館大学歴史都市防災研究センター、同産業社会学会及びソーシャル・キャピタル・リサーチ・ネットワークと共催で、国際ワークショップ「社会ネットワーク・近隣社会と健康の関係を探る」を開催しました。近年、社会のあり方の個人の健康に与える影響について、関心が高まっており、社会学、地理学、疫学などの学際的なアプローチによって多くの研究が進められています。このワークショップでは、日英米から4名の研究者を招いて、社会ネットワークと健康、または近隣社会と健康の関わりについてご報告いただきました。

第1回CEHSOC定例研究会


第1回CEHSOC定例研究会


参加レポート

まず、ハーバード大学公衆衛生大学院のイチロー・カワチ教授からは、「近隣社会・社会関係資本(social capital)・健康」というテーマでご報告いただいた。報告では、最初に社会ネットワークと社会の関連性について、結婚の社会的影響を例に、そのメカニズムについて説明いただき、その後、近年社会学や経済学で議論されている社会関係資本(social capital)について、主に社会的結合(social cohesion)の側面に着目して説明いただいた。ここでは、2002年にシカゴを襲った熱波の事例を挙げ、熱波による死亡には年齢などの個人レベルの要因以外に、日常的な付き合いのあり方とそれに関する地域状況などの要因も深く関わっていることを示された。

第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部副主任研究員である松田茂樹氏には、「子育てネットワークと母親の健康」についてご報告いただいた。母親の子育てに関する不安は、子どもの発育に影響を及ぼし、また少子化の一つの要因ともなっている。したがって、現在、母親を支援する子育てネットワークが必要とされている。そこで、本報告では、どのようなネットワークがより効果的に母親を支援できるのかという点について報告いただいた。報告者が実施した調査の結果、社会階層・育児期からの逸脱・少子化の進んだ地域が母親の孤立の原因であることがわかった。母親の孤立をなくすことが最も肝心であるが、逆に密接すぎる人間関係も悪く、適度な自由が確保された、適度な(moderate)なネットワークを強化・拡大する必要があると報告された。

立命館大学文学部の中谷友樹助教授からは、「日本における健康の地理的格差について」という題目でご報告いただいた。まず、健康と所得の関係について、日本とイギリスを比較した調査研究の結果、両国において所得と死亡率には相互関係があることを報告いただいた。また、東京における健康格差に関する調査では、東京では健康格差が存在し、健康に関する地理的格差は、職業的格差と関連するが、職業だけで健康格差を説明することはできないという結論に達したことを報告いただいた。

最後に、サセックス大学地学部のアンソニー・フィールディング教授(立命館大学客員教授)から、「近隣社会の日英比較」という題目でご報告いただいた。報告者は、日本には格差と社会的地理(social geography)の関係はないという研究報告に疑問を持ったことがきっかけで、日本における社会的格差・階級と地域に関する研究を始めた。その研究の中で、日英にはいくつかの違い、つまり、@通勤費支給の有無、A家屋の寿命、B「家」の社会的意味、C土地利用計画、Dジェントリフィケーション、E他人種の市内への集合、F日本は相対的に平等社会であることを指摘された。しかし、日本でも階層と居住地域との関係が認められることを示された上で、社会的格差と健康と地域との関連について検討する理論の枠組みについても報告された。

報告後の質疑応答の時間や途中のブレイク・タイムでは、40名の参加者を交えて盛んな議論が展開され、今後の日本での研究展開や社会ネットワークと近隣のあり方の関係など、多くの論点が活発に議論がなされた。


(文責:立命館大学人間科学研究所 棟居徳子)

過去のワークショップなど

 

   

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