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第9回CEHSOC定例研究会

「臨床倫理コンサルテーションの役割と課題
  〜医療現場の倫理問題を「個人の悩み」にしないために」

板井孝壱郎氏
 (宮崎大学医学部社会医学講座生命・医療倫理学分野准教授)

2007年5月26日(於 立命館大学衣笠キャンパス 修学館2階 第2共同研究会室)

2007年5月26日に第9回CEHSOC定例研究会が開催されました。報告者は、宮崎大学医学部社会医学講座生命・医療倫理学分野准教授の板井孝壱郎さんです。





参加レポート

新しい医療のあり方を探る その1〜臨床倫理コーディネータの役割〜


医療の臨床現場では、人工呼吸器を抜管すべきかどうか、あるいは抗ガン剤治療を中止するかどうか、生まれてくる赤ちゃんの救命をどこまでするのかといった倫理的問題に遭遇することが多々あります。この倫理的問題に対して、米国では、1980年代から臨床倫理(Clinical ethics)に精通したスタッフの人材養成がなされています。

宮崎大学医学部社会医学講座 生命・医療倫理学分野 准教授の板井先生をお招きして、この倫理的問題について考える機会を持ちました。板井先生は、2002年9月から宮崎大学医学部で常設型倫理コンサルテーションルームを開かれ、この倫理的問題に直面した医療従事者のサポートをされてきました。2005年5月からは宮崎の地域病院でも同様の取り組みをされています。

これまでに、約680件の相談があり、医療従事者が倫理コンサルテーションを依頼した理由をみると、臨床現場では、@治療方針についての迷い(倫理的・法的妥当性に対する不安)、A医師と患者・家族との板挟み、B患者・家族への対応に困った、C医療従事者間の意見の不一致、D漠然とした「煮詰まり」感があるということが明らかになっています。そして、倫理コンサルテーションを受けたことで、@診療方針に関する具体的アドバイスを得られた、A疑問点・問題点を整理できた、B(援助者自身が)あらたな「気づき」を得た、C「スッキリ感」が得られた、D同職種間の「煮詰まり」を打開できた、E感情的・心理的サポートが得られた、F「チーム」によるコンセンサス形成が得られた、G「医療・ケアの質」の向上に貢献できたなどの変化がみられてきているということでした。

研究会の後半では、グループ毎に、事例を臨床倫理についての4分割チェックシートを用いて検討しました。このチェックシートは、「医学的適応」、「患者の意向」、「QOL(生きることの質)」、「周囲の状況」のそれぞれについて、事例を討議するためのツールです。前半の講義で紹介された宮崎での変化、そして、後半のグループワークを体験することによって、「倫理問題を個人の悩みにしない」、というこの研究会のテーマの主旨が、参加者により実感できたと思います。

「複数の医師及び看護師等が連携して対応を決めていくことのできる体制の確立」、それをサポートする医療スタッフへの倫理的支援体制、いわゆる「倫理コンサルテーション」のシステム構築がなされた時、新しい医療のあり方が提示されるのではないでしょうか。

(文責:宮崎大学医学部看護学科 小児・母性(助産専攻)看護学講座 助手 小嶋理恵子)


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