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研究会などの催し
 
 

第8回CEHSOC定例研究会

「親になることの支援〜当事者の妊娠・出産体験と援助者の役割」

小嶋理恵子氏
 (宮崎大学医学部看護学科助手)
松島京氏
 (立命館大学人間科学研究所客員研究員)

2007年2月3日(於 キャンパスプラザ京都)

2007年2月3日に第8回CEHSOC定例研究会が開催されました。報告者は、宮崎大学医学部看護学科助手の小嶋理恵子さんと、立命館大学人間科学研究所客員研究員の松島京さんです。 CEHSOCサブ・プロジェクトである「妊娠・出産に関わる当事者エンパワーメント」の研究として、これまで実施してこられた当事者と援助者へのインタビュー調査をもとに、研究経過を報告していただきました。

 

参加レポート

子どもを産み育てることが困難な社会になっていると言われています。「親になること」への支援の必要性が認識され、各地で子育て支援の取り組みが行われるようになりつつあります。しかし、あくまで子どもが産まれてからの支援であり、これから子どもを産む人へのアプローチはまだまだ少ないです。

報告者は、妊娠・出産期を人間関係が変容する時期として捉え、体験する場所としての医療機関でのケアの重要性に注目しています。これまでに、産科や助産院でスタッフや出産体験者への聞き取り調査を行い、その詳細はプロジェクトの研究成果報告書にまとめられています。今回の研究会では、本研究の意義や研究経過など全体的な枠組みを踏まえたうえで、これまで二回行われた当事者へのインタビュー調査についてご報告いただきました。

調査では、妊娠・出産に伴い夫婦関係においてどのような葛藤が生じ、それをどのように解決しているのかについて聞いています。夫婦間の葛藤が起こる時期は妊娠初期から中期が多く、夫婦間の葛藤の要因として妻側では「前回の出産体験」「変化した体調」「夫への不満」などが影響しており、夫側では「仕事の疲れ」や「自分の問題ではないという意識」などが影響していました。特に男性は子育て以上に身体的にも社会的にも妊娠・出産における当事者になりづらいという背景があり、男性への働きかけの重要性と難しさを感じました。夫婦がコミュニケーションスキルを習得すること、特に「女性が男性の立場を思いやること」が葛藤の解決に必要ですが、それはなかなか難しいことです。具体的なエピソードとして助産師のアドバイスによって当事者の夫婦間のコミュニケーションスタイルが変化したやりとりも紹介されており、第三者としての援助者の働きかけの重要性を感じました。

今回の報告を聞き、夫婦間の葛藤を解決するスキルの伝達や心理的ケア、男性への援助の必要性を強く感じました。今後も当事者の声を集める作業が積み重ねられ、子育て支援策の一環として妊娠・出産期の当事者エンパワメントの実践につながっていって欲しいと思います。

(文責:立命館大学社会学研究科 清水誓子)


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