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第2回CEHSOC定例研究会

「健康権(the right to health)の国際的動向」

棟居(椎野)徳子氏
(金沢大学大学院社会環境科学研究科)


2006年1月13日(於ぱ・る・るプラザ京都)

第1回CEHSOC定例研究会2006年1月13日にCEHSOC定例研究会の第2回目が開催されました。報告者は金沢大学大学院社会環境科学研究科の棟居(椎野)徳子さんです。国際的に明文化されている健康権(the right to health)ですが、日本における認知度は高いとはいえません(しかし健康権を規定した国際条約を批准・発効しています)。今回は、健康権の生成とその発展過程、そして今後の議論の方向性について報告していただきました。

 

参加レポート

健康権の生成の過程とその発展の流れについて詳細に説明していただいた。WHO憲章前文に始まり、「世界人権宣言」「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」を経て、国際的にも明文化されていく過程と、WHOのアルマ・アタ宣言やオタワ憲章、それぞれの国際条約機関から出される「一般的意見」を通して、健康権の具体的・普遍的基準の追求されていく発展とにより、現在の健康権をめぐる議論の活発化の背景を知ることができた。

また、健康権とは「健康である権利」ではなく、「到達可能な最高水準の健康の実現のために必要な様々な施設、物資、サービス及び条件を享受する権利」である、ということについて確認することができた。そもそも健康とは抽象的で曖昧になりやすい。個人の身体上の特質や個人をとりまく環境の多様性から、誰もが同じ状態としての「健康」を提示することは難しい。だからこそ、健康権は、人々の自由と権利と参加の重要性をうたい「利用可能性」「アクセス可能性」「受容可能性」「質」を指針として提示し、国家がそれを保障することを義務として位置づけているのである。

私たちは、医療や福祉の現場における利用者の権利について語る場合、サービス供給形態から、ともすると対医師、対医療・福祉機関、対企業という視点でのみ捉えてしまう。しかし、健康権を保障するのは国家の義務であることやその内容をふまえれば、医療政策や社会保障政策をも展望する視点が必要となるだろう。そのためにも、日本における健康権の認知度を高めていかねばならない。また、報告後は多岐にわたる議論が展開された。あらためて、健康をめぐる複合領域的な共同研究が今後必要であると感じた。

(文責:立命館大学人間科学研究所ポストドクトラルフェロー 松島京)

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