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少子高齢化時代を生きる女性の主体的ライフを支える学融的研究女子大学生が描く女性のライフ―仕事・子育て・家族のケア役割をどう考えるか―

筆者: 川本静香(立命館グローバル・イノベーション研究機構 客員研究員) 執筆: 2018年04月

子育てや介護は女性がやるもの?

日本社会では、古くから育児や介護の担い手を家族内、とりわけ女性に求めてきたと言われています。これは、女性の社会進出が進んだ今日においても根強く残っています。近年では、男性の育休申請や家事分担が話題になるなど、少しずつ昔に比べると様相が変化してきてはいますが、それでもなお、育児は母親が担うことが「普通」と考える人も少なくないのが実情です。
一方で、政府は平成29年に「女性活躍加速のための重点方針2017」を決定し、より一層、女性が働きやすい、また社会のあらゆる分野において女性が活躍できるようすることを推進しています。こうしたなかで、女性を取り巻く環境や社会が徐々に変容していく中で、また、少子高齢化の時代を迎えた今、女性が自身の人生を主体的に生きるためには、従来のように、家族内の女性が自身の人生を犠牲にして育児や介護を行う以外の、多様なあり方を模索していくことが重要でしょう。

女子大学生が描く、仕事・子育て・家族のケア役割

女性を取り巻く社会が変容しつつある今日、これから就職や結婚、子育て、介護を経験する若い女性は、子育てや介護、そして自身の仕事やキャリアについてどのような考えを持っているのでしょうか。従来型の価値観を内在化しているのでしょうか。それとも、個々に異なる多様な価値観を持っているのでしょうか。この点を明らかにするために、筆者は、大学4年生の女子大学生3名にフォーカス・グループ・インタビューを行いました。
インタビューの結果をごく簡単にまとめれば、2名の女性は、仕事と子育てを両立したいと考えており、そのためには、パートナーとなる配偶者との関係性が重要であるという認識を有していることが明らかとなりました。一方で、1名の女性は、自身にとっては子育てをきちんと行うことが重要であり、いわゆる良妻賢母を目指したキャリアプランが重要であることが語られました。また、介護については、1名の女性からは、家族の中で担うのではなく、福祉サービスの利用を積極的に行うべきであるという考えが語られました。この考えは、就職や結婚で、自身の親との同居が困難となる可能性があることが大きく影響しているようでした。また、このような彼女らの認識は、自身の親(特に母親)の家庭内でのケア役割に関する振る舞いや、その中での自分自身がどのような経験をしてきたかに影響を受けていることが、インタビューの分析を通して明らかになりました。

女性の多様な生き方を支えるには

先に挙げたインタビューに参加した女性は、三者三様に本テーマに関する価値観を持っていましたが、フォーカス・グループ・インタビューの中で、他者の価値観やそれに影響を及ぼしたであろう経験や親との関係性について触れることで、個人によって多様な生き方がありうることを再認識し、価値観が多様化していく様子が見受けられました。生きた経験や語りを対話によって共有することで、「女はこうするべきだ」といった言説にとらわれること無く、多様な価値観が獲得されるとすれば、こうした語りの場の設定は、女性の多様な生き方を支えるひとつのプラットフォームに成り得るかもしれません。

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