【開催報告】アドバンスト研究セミナーVol.10 「ナッジ再考 ―自由・自律・責任―」

「ナッジ」の意味について身ぶりを交えて説明する、企画者の井上彰准教授(左)。お茶の水女子大から招聘した、講師の板井広明先生。コメンテータの児玉聡先生(京都大)。
 12月11日(金)、10回目となる人間科学研究所アドバンスト研究セミナーが開催されました。

 今回のテーマは「ナッジ再考 ―自由・自律・責任―」。2014年6月に行われたアドバンスト研究セミナーVol.6「規範理論と実証理論の対話に向けて-リバタリアン・パターナリズムを題材に-」では、今回と同じく井上彰准教授(先端総合学術研究科)が企画し、若松良樹教授(学習院大)、清水和巳教授(早稲田大)、そして宇田川大輔講師(苫小牧駒澤大)に「Nudgeは堅牢か? -LP・LBに関する実験研究-」と題するご報告をしていただきましたが、今回はその続編にあたります。

 「ナッジ」とは英語で「人をひじで軽く押す/つつくこと」を意味し、行動経済学の分野で選択状況を変えることで、人々に特定の(望ましい)選択を促すという意味で使われています。

 今回は、そのナッジという政策規範がどのような根拠に基づいて正当化しうるのかについて、功利主義との関係を中心に検討し、その適用可能性、とくに日本における適用可能性について議論することを目的としたものです。そのこともあって、功利主義にかかわる業績を多数お持ちの2名を招聘しました。

 企画者である井上彰准教授の進行のもと、まず、お茶の水女子大学ジェンダー研究所特任講師の板井広明氏にご報告いただきました。報告内容は「ナッジと功利主義の関係、ナッジ自体のバイアス、とくに科学、文化、ジェンダーといったバイアス要因やその正当化問題、ナッジによる自由の毀損、設計者の責任問題、なぜ日本ではナッジがうまく活用されないのか」に迫るもので、ナッジの正当化および適用可能性にかかわる論点を包括的にカヴァーするものでした。

 コメンテータとして、京都大学大学院文学研究科から児玉聡准教授を招聘。児玉氏には、ナッジ(リバタリアン・パターナリズム)と功利主義の異同、ナッジと徳の関係、ナッジの透明性、そして望ましい選択肢を評価するときに関わってくる利益をどうカウントしうるのか等、数々の鋭いご指摘と問題提起をしていただきました。板井氏のリプライは、主として功利主義とナッジの異同について、初期のベンサムと後期のベンサムにおける自己利益認識の差異や危害原理の厳密な解釈についてのものでした。

 本学教員からも、保健医療・医療社会学・医療社会政策にかかわる研究者などが多く参加し、また他大学から経済学史をご専門とする方もお見えとなり、児玉氏のコメントのあとは濃密な議論の場となりました。たとえば、ナッジ(リバタリアン・パターナリズム)の正当化基準の不明瞭さやナッジの適用範囲の問題、人口に膾炙したナッジの社会工学としての特性、公共財とナッジの境界、ナッジによる変化対象の曖昧さが論点として取り上げられました。

 今後も、今回のような研究会を継続的に開催してまいります。関心のある方はぜひご参加ください。

人間科学研究所アドバンスト研究セミナー 最近開催分のご報告

※今後の予定についてはHP上でお知らせいたします。

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