【開催報告】アドバンスト研究セミナーVol.6「規範理論と実証理論の対話に向けて-リバタリアン・パターナリズムを題材に-」

 人間科学研究所では学外からご高名な研究者や実践家を招聘し、学内外の研究者・大学院生と濃厚な研究交流をする場として、アドバンスト研究セミナーを開催しております。
 7/4(金)には、今年度3回目のセミナーが開催されました。「規範理論と実証理論の対話に向けて-リバタリアン・パターナリズムを題材に-」と題したこの日のセミナーは、北海道と東京から3人の研究者を招聘し、現在日本政治学会や日本法哲学会などでも注目されている「規範理論と実証理論の対話」というテーマを、リバタリアン・パターナリズムを切り口として取り扱いました。
 リバタリアン・パターナリズムとは、人々の選択の自由を尊重しつつも、人々を厚生改善の方向へと誘導(ナッジ)する政策を一般理論的に正当化する規範理論上の立場です。その知的バックグラウンドは、社会心理学や行動経済学という、今日の社会科学をリードする学科領域です。この日招聘した登壇者は、それぞれ法哲学、実験経済学、社会的選択理論という異分野の研究者ですが、司会を務めた井上彰(先端総合学術研究科准教授)とともに、二十一世紀文化学術財団学術奨励金からの助成を受け「リバタリアン・パターナリズムは堅牢か?-規範理論と実証理論の対話のために-」というテーマで研究を推進しております。この日のセミナーはその助成を受けた研究の進捗報告の場としても位置づけられました。
 報告は2本立てで行われ、まず学習院大学法務研究科の若松良樹教授が、「リバタリアン・パターナリズムの規範的分析」と題した研究報告を行いました。「パターナリズム批判の因数分解」(亀本洋編『スンマとシステム』、2011年)を著すなど、このテーマの第一人者である若松教授のご報告は、リバタリアン・パターナリズムとはそもそもどういう立場かというところから始まり、経済学における有力な仮説――ホモエコノミクス仮説と顕示選好理論――がパターナリズムとどう対峙しているのかを検討し、そのうえでリバタリアン・パターナリズムがナッジ形態のパターナリズムを理論的に擁護することに失敗している点を分析的に明らかにするものでした。
 続いて、早稲田大学政治経済学術院の清水和巳教授と苫小牧駒澤大学国際文化学部の宇田川大輔専任講師が中心となって共同で進めてこられた研究の成果を、「Nudgeは堅牢か? -LP・LBに関する実験研究-」と題するご報告として、宇田川先生に発表していただきました。お2人のご報告は、リバタリアン・パターナリズムの考え方に基づく公共政策が「公共」政策である以上、公開性を前提にせざるを得ないことから、その堅牢性(robustness)が問われることに注目して、その点をWeb調査に基づく実験によって検証するというものでした。具体的にみると、健康に絡む場合と臓器提供に絡む場合では、ナッジ政策がとられたことがわかったときに被験者の反応は、前者よりも後者の方がより厚生損失を示すものとなっており、なおかつ後者においてパターナリズムの効果が有意なものではないとする興味深い実験結果を明らかにするものでした。
 セミナーには、他大学の研究者、大学院生や学部生、本学の若手研究者など多くが集まり、活発な議論が行われました。会場からは、公開性や実験デザインに関する興味深い意見や質問が投げかけられ、議論が大いに盛り上がったこともあって、大変有意義な研究会となりました。

人間科学研究所アドバンスト研究セミナー 今年度のスケジュール

Vol.4. 6/5(水)「社会福祉の国際比較研究の方法をめぐって -ソーシャルワークのレジーム類型を中心に-
Vol.5. 6/28(土) 「障害のある児童・生徒の継続的支援のための情報共有の仕組みについて」 
Vol.7. 7/17(木)15:00-17:30 「供述分析法セミナー」 
※後期の予定は改めてお知らせいたします。


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