【開催報告】アドバンスト研究セミナーVol.5「障害のある児童・生徒の継続的支援のための情報共有の仕組みについて」

 2013年度から始まりました人間科学研究所アドバンスト研究セミナーは、おかげさまで5回目を迎えました。毎回、参加者から鋭い質問が投げられるなど、活発な議論が行われております。
 6/28(土)に行われた「障害のある児童・生徒の継続的支援のための情報共有の仕組みについて」は、これまでのセミナーとはやや異なる趣旨で行われました。今回招聘したのは、大学や研究機関で研究を行ういわゆる「学者」「研究者」ではなく、総合支援学校の教職員とPTA会長、つまり対人援助の現場で働く「実務家」の方々です。その点において、今回のセミナーは、対人援助分野における学術研究<学>と、現場で行われる実践<実>をつなぐ、まさに2013年度から当研究所が全所的プロジェクトとして掲げる「インクルーシブ社会に向けた支援の<学=実>連環型研究」の一環であったと言えます。
 さて、今回のテーマであった「障害のある児童・生徒の継続的な支援」のためには、関連する支援者・支援機関の間での情報共有が必要となります。この課題に積極的に取り組んで来られたのが京都市立西総合支援学校と京都市立北総合支援学校であり、今回の報告はこの2校の関係者によって2部構成で行われました。
 報告に先立って、司会の中鹿直樹(文学部准教授)と企画の望月昭(文学部教授)から、2004年度より取り組んでいる「学生ジョブコーチ」の実践・研究の成果に基づき、情報共有の必要性という今回のテーマについての説明を行いました。そもそも当研究所では、継続してこのテーマに取り組んでおり、その研究成果や進捗は、『共同対人援助モデル研究 報告書10』「対人援助学の可能性」で発表してきました。
 最初の報告は、京都市立西総合支援学校から、上田征樹副教頭と上田文彦研究主任が登壇し、「できますシート」をはじめとする当校の取り組みについて報告をしていただきました。「できますシート」とは、個別の児童・生徒の、今の時点で援助付き/援助なしで成立する行動について記録し、次のステップにつなげるために作成したものです。さらにこのシートを中心として、個別の包括支援プラン、情報バンクといった情報共有システムを構築しています。本年度は、研究の一環として「できます会」という話し合いの場で、できますシートを中心にした、児童・生徒の情報共有の取り組みを行っていることなどを紹介いただきました。
 次に、京都市立北総合支援学校から清野嘉奈子PTA 会長、小澤牧子研究主任、土田菜穂講師に登壇いただき、「サポートブック」の取り組みについての報告をしていただきました。同校のサポートブックは、保護者からの要望によって作成されたもので、その作成の経緯や保護者の間に広めていくための工夫などが清野PTA会長から語られました。小澤先生と土田先生からは、保護者からの要望に応える形で、何回も話し合いを重ね、また外部の福祉施設なども話し合いに参加することで、より良いサポートブックを作成していった経緯が語られました。
 セミナーには、応用人間科学研究科など本学大学院生や教員、京都市内で特別支援教育に携わっている教職員や教育委員会の方など、セミナーのテーマに関心を持つ方が30人近く集まり、活発な議論が行われました。
 会場からは、情報バンクなどの取り組みの全国的な展開や、情報バンクの持つ教員の教育へのフィードバック効果、学校主体の取り組みと保護者・当事者主体の取り組みの融合などに関して活発な質問や意見があり、有益な話題について参加者で共有することができました。

人間科学研究所アドバンスト研究セミナー 今年度のスケジュール

Vol.4. 6/5(水)「社会福祉の国際比較研究の方法をめぐって -ソーシャルワークのレジーム類型を中心に-
Vol.6. 7/4 (金)16:30-18:30 「規範理論と実証理論の対話に向けて-リバタリアン・パターナリズムを題材に」 
Vol.7. 7/17(木)15:00-17:30 「供述分析法セミナー」


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