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「チェーンメール考」

筆者: サトウタツヤ   執筆: 2010年 月

★大震災・噂・チェーンメール
 大震災といえば昔から噂の問題が指摘される。1923年(大正12年)9月1日に起きた関東大震災の時に、流言とあいまった異民族虐殺が行われたことは、今では歴史的出来事になっている(サトウ、2004)。現代の噂は電子メールを媒体として流れることが多く、これをチェーンメールと呼ぶことが多い。
 さて、今回の東北関東大震災に際しても、既にいくつかのチェーンメールが流れ、その対策が必要とされている。では、どのような対策がなされているのかといえば、ある商業サイトによれば「チェーンメールを転送することはいたずらに不安感を煽ることにつながります。チェーンメールを受取った時は、速やかに削除して転送をやめてください」とのことである。
 しかし、噂にせよチェーンメールにせよ、そうだと分かっていたら他者に伝えないのである。何が噂なのか何がチェーンメールなのかが分からないから他者に伝えたり転送するのである。したがって、先の警告は少しおかしいというか従うことが難しいといえる。

★チェーンメールの禁止は矛盾
 「チェーンメールは禁止」のようなルールは決して今に始まったことではない。2000年前後の文献にも早くもそうした警告が発せられているものもある。だが、そのような警告で禁止できるならチェーンメールはそもそも存在しない。ウィルスメールを作るのは禁止、というようなレベルでチェーンメールを禁止したところで何の意味もない(このような禁止も作りたいひとには意味がない)。「送らざるをえない」と思わせるような内容のメールがチェーンメール化するのである。だからといって、その対策はチェーンメール禁止、などという循環論的なものであってはならないのである。
 ではどうするか。
 チェーンメールは禁止、と言うのではなく、送りたくなるのがチェーンメールの本質であるということの理解を徹底させ、他者に送る前に一呼吸おくように指導することが必要なのではないだろうか。
 チェーンメールに関しては、「送りたい」「送らなきゃ」という心理的圧力である。この瞬発性こそが、チェーンメールの本質であるということを理解しなければならない。

総務省 国民のための情報セキュリティサイト 教育用資料[br][url=http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/security/download.htm]「一般利用者のための情報セキュリティ対策」より引用

★地震とチェーンメール
 一般に、携帯電話を通じたメールにおいては、その発信者の匿名性が担保されないため、悪意ある形式の情報は流れにくい(松田、1998)。
 誰が誰の悪口を言っているかバレてしまうからである。そもそも、地震とは無関係に、善意の形式をとった情報がチェーンメールとなる。そして、もちろん、地震の時に問題になるのも、「善意(警告)メール」である。そもそも動機からして悪である場合の情報伝達はデマと呼ばれるが、情報内容には動機は含まれないため、こうした分類も、チェーンメールを少なくする・禁止するという文脈からは無効である。
 では、見分けるすべはないのか。と言えばあるのである。それは「すぐに回してください」とか「転送希望」とか最近の言葉では「拡散希望」と書いてあるメールは、とりあえず、チェーンメールであるかもしれないと考えることである。
 内容が真か偽かは問題ではなく、送り主の意図が善意か悪意かも関係ない。「すぐに回してください」のような情報をもらった時には、まず、そこで一呼吸置き、その内容が正しいかどうかを複数の手段で確認し、その上で、他者に送ることが必要だと感じられたら、送れば良いのである。被災地以外では情報の瞬発性は必要ないのであるから。

★結語 被災地と被災地以外と
 なお、以上のことは余震や津波の心配がある時期の被災地には当てはまらない。情報の真偽にかかわらず、個人の生命を維持できるような観点から情報伝達はなされるべき時期と場所がある。
 たとえ結果的に誤報であっても、一呼吸おいて考えることが災いをもたらす可能性があるからである。瞬発性が必要な情報伝達もありうるのだ。
 つまり、チェーンメールについては、被災地と被災地以外とで対処が異なってよい。そしてこのこともまた、情報とは何か、情報伝達とは何かという本質を考えるきっかけをあたえてくれるのではないだろうか。

文献
サトウタツヤ 2004 うわさとパニック 「立命館人間科学研究」No. 7
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/k-rsc/hs/hs/publication/files/NINGEN_7/193-203sato.pdf
松田美佐 1998 うわさの科学 河出夢新書

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