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「カナダのイメージ」

筆者: 尾田 政臣   執筆: 2009年 月

広々としたキャンパスは、カナダのイメージにピッタリ 暑かった日本も、ようやく過ごしやすくなった9月末に薄手のジャンバーを着てカナダ・バンクーバーに到着した。キャンパス内の宿泊施設に予約を入れていたのでタクシーで直行した。ところが着いたところは研究所。聞くと、宿泊施設は別の所。荷物を引いての移動は大変と、親切にも宿泊施設へ電話を入れて迎えに来るよう手配してくれた。さすがは親切なカナダ人。空は高く、巨大な木が茂る広々としたキャンパスを歩いているとリスが冬に備えて、両手で木の実を抱え一所懸命皮を剥いでいた。この記述はどの程度あなたのカナダのイメージに合っているだろうか。現実とイメージは時として異なる。同じ情報でも受け手の感受性が違えば異なる印象をもつのも当然。カナダといっても広く、ローカル色があり、また経験するサンプル数が少ないのだから、その信憑性はそれほど高いものではない。そんな断りをいれつつも、個人的な体験を通したカナダのイメージと現実とのギャップについて書いてみたい。
 手始めに書き出しの文章だが、9月末といえば日本でもすでに秋、さぞ過ごしやすい天気、ひょっとすると寒い日もあるかなと思い込んでいたのは大きな間違いであった。連日晴天で、強烈な紫外線で外は暑い。暑いといっても湿度は低いので日蔭は過ごしやすい。カナダでは30度以上になることはめったにないので、クーラーはないと聞いていたが、研究室はガンガンにクーラーが効いて異常に寒い。頭の芯まで冷えた。タクシーの運転手は裏口まで車を廻した揚句「ホテルではないようだけど」と心配しながらも、さっさと帰っていった。
 アメリカの銃乱射事件の時の解説で、アメリカとカナダを比較し、「カナダは銃規制があり、平和なので、庶民も鍵をかけずに寝ています。」ということを、日本の評論家が確かに言っていた。信じていました。少なくともバンクーバーでは全く異なる。「アパートを探すためには不動産屋へ」は日本の常識。でも新聞、ネットなどでみて、電話するというのがカナダでの常識。電話を持っていなかったので、とりあえず現地へ行って、空き物件を探そう。確かにvacantの表示は見つかった。さあ、中に入って物件を見せてもらいましょう。ところが、すべての物件はセキュリティー万全。多少ドアを乱暴に叩いてもびくともしない。

バンクーバー・ダウンタウン、人口密度は東京以上? カナダは広く、人口は少ない。よって、土地が安い。カナダ特産丸太を使った大きなログハウスがあちこちに、というのは誤り。ダウンタウンには高層マンション(コンド)が林立。新築の2ベットルーム以上なら1億円以上。中国から大量の移民があり土地の価格が8年前の倍になったとか。

 意外なことに路駐が多い。郊外の住宅地では家の前には広々とした芝生があるのにもかかわらず、路肩にはびっしり車が駐車。地元の住民は止めてよいのだそうだ。ダウンタウンはメーターがあり、2時間まで駐車可能。道が広いので、車を路肩に止めての荷物の積み下ろしはご法度などと、日本のような理不尽なことは言わずに済むのだ。

 カナダはアメリカとは違い、温度や距離、速度の表記も世界標準と思い込んでいた。しかし、実際にはアメリカの製品があふれているので、否応なくなじまざるを得ない。マーケットに行くと大きな肉の塊はポンド表示、切り分けてある肉はグラム表示またはポンドと併記など、統一されていない。温度もカナダのテレビは摂氏、アメリカのシアトルの放送局は華氏。この違いはすぐわかるが、困ったのはオーブンの表示温度。冷凍ピザを焼こうとしたが、華氏400度にオーブンを温めてからピザを投入の指示。オーブンの温度表示が摂氏か華氏かハタと困った。摂氏400度はないだろうと思いつつも、まずは200度に設定し、最初からピザを入れてその焼き具合を見ながら温度を上げる作戦にでた。300度程度になってオーブンの周辺が触れないほど熱くなるも、なかなか焼けてこない。400度付近でようやく焼け始める。これで華氏表示であることを確信。1時間以上もオーブンの前に張り付いていたことになる。後日、記述通り400度にしてから、ピザを入れるとあっという間出来上がった。オーブンに摂氏か華氏の表示がほしものだが、アメリカ製品を勝手にカナダ人が輸入したという位置づけなのだろか。

家の前は花壇や芝生、路肩に駐車  森林大国のカナダ、さぞ紙は安いと思っていたのだがテイッシュが異常に高い。木材を輸出し、紙を輸入しているためのようだ。メートルを単位とするカナダでも、売られているプリンター用紙はレターサイズ。日本へ送付する書類を作成するため、A4用紙を求めて隣町リッチモンドのダイソーまで出かけた。
 カナダは寒い国。しかし、1年間住む土地バンクーバーについては、事前に年間の気候を調べた。気温は7、8月で平均最高気温22度、平均最低気温13度、最も寒い1月の平均最高気温は7度、最低が1度。降水量は11月から1月までは150〜170mm/月と多く、あとは40〜100mm/月と少ない。札幌は8月の平均最高気温が26.1度、最低が18.2度。最も寒い1月の平均最高気温が-1.1度、最低が-8.4度。ちなみに降水量は50〜100mm/月。この時点で札幌の方が寒いことに気がつく。カナダといえども寒さはさほど厳しくはなく、札幌の冬の寒さに耐えられれば大丈夫、そんな思いを抱いた。しかし、現実の体感温度はさらに異なっていた。10月でも日差しがきつく、Tシャツ短パンの若者、時として老人までが闊歩する。11月になると一転毎日雨が降る。2月上旬までは、雨か、重苦しい曇り空。たまに日ざしがといった陰鬱な日々。オリンピックが開かれるのだから雪は降るものと信じていた。12月に一度だけ皮靴では歩きにくい程度の雪が降った。いよいよ雪の季節到来を予感させられた。ところが、なかなか雪は降らない。でも「いつか降る、降ったら困る」と厚手のコートを考えつつも、一向に降らない雪に、当初予定より薄手のコートを購入。でもとうとう2度と雪は降らなかった。テレビの天気予報を見ると、バンクーバーを除く地方は、-10〜-30度の予報をしている。これこそカナダの気温のイメージにピッタリ。
 カナダは広大な自然が残る国、豊富な海の幸、山の幸に恵まれた国、そんなイメージを抱いてしまう。近くのマーケットでは魚は売られているものの種類は少ない。魚を焼いて食べる習慣がないので致し方ない。その分、牛肉やハム、ソーセージの種類が多く、安い。しかし、必ずしも日本人の口に合うとは限らない。驚いたことにオーストラリアからの輸入肉が売られている。アジアの食材も豊富。さあ、小麦はカナダ特産、さぞやおいしいパンが食べられると期待を抱く。しかし、全くダメ。ネットを検索してみると、日本人の書いたブログが見つかる。「あちこち探してみた結果、ようやくおいしいパン屋にたどり着きました」の記事。先人の努力はありがたい。さっそくその店で買うことにした。カナダのパンはもちもち感がまるでない。日がたったパンを指の間でこすると、さらさらと砕け散る。小麦の種類と配合が異なるのだろうか。パンに対するうまさの基準も日本人とカナダ人では違うのであろう。
さて、この文を読んでカナダに対する印象は変わっただろうか。ここに書いた印象は本当に正しいか、自分でも不安になる。実は、この中に一箇所だけ真実と違うところがあるのだが、どこか分かるだろうか。

2010.3.10 カナダ・バンクーバーにて

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