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「NPO研究でも「韓流ブーム」?」

筆者: 秋葉 武   執筆: 2009年 月

秋葉 武(産業社会学部准教授) 本研究所の研究プロジェクトの一つである「医療・福祉エンパワメント・プロジェクト」の一員として、日本の市民活動のアクターである生協やNPO・NGOにおけるメンバーの「参加」について研究をしてきた。

 そうしたなか、昨年度から韓国の市民活動に注目し、研究を始めた。韓国は市民運動の政治的な影響力が強く、法律の制定にも大きな役割を果たしているからだ。とりわけ、2000年代に入ってそれが顕著となってきている。

 約500の市民団体が参加する「2000年総選挙市民連帯」による「落選運動」、2008年の米国産牛肉の輸入反対を訴える国民による「牛肉デモ」は、日本でも繰り返しメディアで報道された。

 また、グローバル化が進み、多くの国で雇用問題が深刻化するなか、雇用創出に役割を果たす「社会的企業」が世界的に注目を浴びている。2006年、韓国では市民団体の働きかけもあって、アジア初となる「社会的企業育成法」が制定され、翌年から政府に認定された社会的企業が登場し始めている。

 現在の日本で、NGOが中央政府に一定の影響を与え、可視的な権力として登場する〝絵になる〟社会運動を見出しにくい。それもあって、日本のアカデミズム、NPO関係者やメディアのなかには、韓国を「先駆的な市民社会」と捉える者も増えてきた。

 しかし、本当に先駆的かは、慎重にみていく必要がある、と筆者は韓国を少しずつ知るにつれ、思うようになった。

 それは民主主義の歴史とも密接に関連している。韓国は1987年に「民主化」されてから実質的に20年強の民主主義の歴史しか持たない。

 1945年の第2次世界大戦終結以降、韓国社会は過酷な歴史を歩み、そのことは今日の韓国の市民社会に影を落としている。1950年の朝鮮戦争、済州島4.3事件(1948年)、軍事政権下の光州事件(1980年)をはじめとした歴史のなかで、議会制民主主義は依然として定着しているとは言い難い。

 民主主義の未成熟、その裏返しとしての強大な大統領の権限、のなかで、市民団体は地域で活動するよりもピラミッドの頂点である、大統領、国家に働きかけ、法律制定という成果を獲得することに腐心してきたともいえよう。

 トップダウンで制定された法律が、「内実化」するかどうかは長い目でみていく必要があるし、研究者としてそのことを心がけなければと思っている。

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