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「夫婦について」

筆者: 宇都宮 博   執筆: 2006年 月

文学部助教授[br]宇都宮博  「熟年離婚」や「定年離婚」という言葉が巷をにぎわして久しいが,増加傾向にあった離婚率は、2002年をピークに減少に転じている。その一因には,離婚後の年金分割制度が施行される翌年4月まで、「踏みとどまる妻」が増えているのではないかという指摘がある。いわゆる2007年問題である。

 男女の寿命がそれほど長くなかった時代、金婚式や銀婚式を迎えることは、手放しで喜ばれていたことだろう。しかし、夫婦共白髪が珍しくない現代社会においては、互いがどのような関係性を築いているかが問われるようになってきている。結婚生活が長期になればなるほど、それだけ共有する経験も増え、過去の関わりの質が良くも悪くも重要性を帯びてくる。

 中高年夫婦を対象とする心理学的研究をみると、妻の側の現状への不満や夫への愛情の低さが報告されている。そうした結果をみると、実際に離婚に至らないまでも、「もしやり直せるなら…」、「この人でなければ…」と考えている女性は相当数いるのではないかと感じさせる。むろん、そういった思いをもっている人は、男性の中にもいるに違いないだろうが。

 その一方で、「若者の結婚離れ」も社会問題として注目されている。若者の結婚離れの背景には、さまざまな要因が存在し、個人差も大きいと考えられるが、両親の関係を通して婚姻制度そのものに懐疑的になっているケースも少なくないだろう。葛藤状態にある両親が「なぜ結婚生活を続け、共に生きようとしているのか」といった疑問は、アイデンティティや親密性を模索する青年期、成人初期の子どもたちにとっては,切実な問題といえよう。

 つい先日、合計特殊出生率が1.25にまで低下したことが発表され、マスコミでも連日取り上げられている。結婚(法律婚)と出産とが表裏一体の関係にあるわが国では、少子化を食い止めるため、国を挙げてお見合いパーティーを推進しようとする動きすらある。熟年離婚と若者の結婚離れに共通して見えてくるのは、「法律婚幻想」への気づきである。結婚のための出会いを提供するのもいいが、むしろ婚姻届に依存しない生き方を追求する個人やカップルへの子育て支援に本腰をいれることの方が、少子化の抑制には現実的であるように私には思えてならない。

 最後に、中高年夫婦に話を戻すが、離婚問題をドラマの世界や他人事として片付けるのでなく、今一度夫婦で互いの思いを語り合ってみてはいかがであろうか。わかっているようで、案外相手のことがわかっていないかもしれない。人生の後半を実り豊かなものにするためにも是非お勧めしたい。かくいう私も自分への戒めの言葉としたい。

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