えっせい

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より
「雪の値段、その3(追加編)」

筆者: 徳田 完二   執筆: 2005年 月

応用人間科学研究科教授[br]徳田完二 北国では雪が積もると各家庭で雪かきをする。それを怠れば生活に支障をきたす。札幌に行ってから最初のふた冬は公務員宿舎に住んだが、そこには雪かき当番というのがあって、宿舎前の雪かきが仕事だった。日直式で、当番の家は玄関に「雪かき当番」と書いた札をかけ、雪が降っても降らなくても、次の日には隣に札をまわした。

 その後一戸建てに住むようになり、言うなれば毎日が雪かき当番になった。さまざまなタイプの雪かき道具が市販されていた。多くはスコップ型の道具だが、中には「ママ・ダンプ」とか「ママさんダンプ」とか呼ばれる少し大型の道具があった。これは、四角いスコップの先端部分にリヤカーの引き手のようなものをつけたような形で、前に押して雪をすくい取ったり、橇のように滑らせて雪を運んだりする。雪をすくい取る部分は、ざっと一メートル四方ほどである。その道具の名前は、この地における雪かきの主役が主婦であることを物語っている。実際、夫のいない日中、せっせと雪かきに励むママさんたちは多い。

 若い頃は、雪が積もると「さあ、やるぞ」とファイトがわいた。が、四十歳を過ぎると少し辛くなり、四十代半ばになるとめっきり辛くなった。そうしてついに、お金でケリをつけることにした。

 雪かきに関して困ることは、家が密集した場所だと捨て場がないことである。わが家の場合、さいわい隣が空き地だったので捨て場には困らなかったが、両隣にも家の前にも空き地がない家では、どこにも捨てようがない。そこで普及しつつあるのが、融雪機とロード・ヒーティングである。融雪機とは、読んで字のごとく、雪を融かす機械で、地面にあけた穴に放り込んだ雪を、温水をかけるか火で熱するかして融かすのである。しかしこれだと、雪捨て場の心配はなくなるが、穴に雪を放り込む作業は人力で行わなければならないので、雪かきの労力はそれほど減らない。これに対してロード・ヒーティングは、熱線(または、温水を流すパイプ)を地面に埋めて地表を暖め、その熱で雪を融かしてしまうものである。自動運転にしておけば、センサーが降雪を感知し、降った先から勝手に雪を融かしてくれる。わが家では、値段は高いが雪かきの不要なロード・ヒーティングを取りつけることにした。設置費用は百万円ほどだった。不凍液を暖めて温水にする灯油代としてひと冬数万円かかる。

 ロード・ヒーティングのおかげで、家に帰ったら玄関が雪に埋もれていて、雪かきしなければ家に入れないという事態に遭遇することはなくなった。しかし、貧乏性のわたしは、ロード・ヒーティングをしてある場所の雪が融けた後も、余熱を無駄にするのがもったいないような気がして、他の場所からわざわざ雪を運んで融かすため、せっせと雪かきをしてしまうのだった。

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