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キャリア発達の図化プロジェクトより
「「キャリア」という言葉の意味を考える」

筆者: 妹尾麻美(立命館グローバル・イノベーション研究機構 研究員)   執筆: 2017年 7月

 皆さん、「キャリア支援」「キャリア教育」という言葉を1度は耳にしたことがあるだろう。本研究所でも、多くの研究者がこの言葉に関連のある研究を行っている。だが、この言葉が一般に普及するようになったのは2000年代ごろと近年のことである。これまでも、上級官僚を指し示す言葉として「キャリア」という言葉は用いられていた。しかし、一般に用いられること、とりわけ、以下で述べるような大学教育の文脈で用いられることは少なかった。
 大学教育の文脈でこの言葉が用いられるようになった理由の一つは、長期不況による大学生の就職難を支援することであった。2000年に、文部省の「大学における学生生活の充実方策について」という報告で大学におけるキャリア教育の充実が指摘される(谷田川2016)。この動きに合わせて、大学は「就職部」を「キャリアセンター」へと変更した。たとえば、立命館大学は、早くも1999年に就職部をキャリアセンターへと替えている。
 このように普及した「キャリア支援」「キャリア教育」であるが、「キャリア」という言葉の曖昧さが問題点として指摘されている(谷田川2016)。この言葉は、ラテン語における車輪のついた乗り物向けの車道carrariaが語源で、比喩的に職業や人生の経路、経歴などを意味するようになった(諏訪2017)。学術的な用法については、日本労働研究雑誌の2017年4月号に詳しい。一般には、「キャリア」は「人生(life)」や「人生全体の行路」を意味することもあれば、「職業」や「就職」などを意味することもある(谷田川2016、諏訪2017)。そのため、どのような経歴を指して「キャリア」と呼ぶのか曖昧になりがちである。
 このような言葉の曖昧さゆえ、大学の「キャリア支援」や「キャリア教育」の内容もまた曖昧になっている可能性がある。なぜなら、大学や実施者によって「キャリア」で指すものが異なると、その支援や教育も異なりうるからである。むろん、一定数の人が転職、雇用形態の転換などを経験する現代社会において、大学教育で職業についての知識を深めることは重要である。しかし、学生に伝わる知識が各大学・各実施者によって異なれば、混乱や不安を招きかねない。
 とりわけ、「キャリア教育」や「キャリア支援」において職業を考えるさい、個々人の意志が強調される。しかし、職業に関わる知識は他にも多くある。たとえば、雇用形態や賃金体系、労働時間、ジェンダー規範などさまざまなことが職業と関わっている。それゆえ、各専門分野それぞれの知識を踏まえて、社会に生きるすべての人が豊かな職業生活を歩むことができる「キャリア教育」や「キャリア支援」を検討することが求められている。

参考文献

  • 谷田川ルミ、2016、『大学生のキャリアとジェンダー』学文社。
  • 諏訪康雄、2017、「キャリアとは―法学の観点から」『日本労働研究雑誌』No.681、67-69p。

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