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障害のある生徒のキャリア支援プロジェクトより
「「援助付き『できる』」の拡大を目指して」

筆者: 土田菜穂 (総合心理学部助手)   執筆: 2016年 12月

プロジェクトの概要

障害のある個人に対して,継続した支援を提供するためには,過不足ない情報を支援者間でつなげていくことが不可欠です。そのために,いかに必要な情報を見つけ出すか,また,どのような書式や伝達方法で情報をつないでいくかを検討することが本プロジェクトの目的です。情報を見つけ出す場として,大学内の模擬店舗を利用して特別支援学校の生徒の就労実習を行い,生徒の「できる」を拡大するためのキャリア支援のあり方を検討しています。また,情報の書式や伝達方法に関しては,京都市内の特別支援学校と連携して「できる」の情報の書式や「できる」を蓄積するシステムの運用について検討しています。

「できる」の拡大こそキャリア支援の鍵

本プロジェクトでは,対象生徒の行動を「こんな援助があればこんなことができる」という「援助付き『できる』」で表現します。学校現場で支援者が子どもたちの行動に目を向けるとき,「行動」だけを切り取って捉えがちです。しかし,行動が起きる前後の環境の変化という視野を広げて行動を捉えたときに,子どもたちの行動の新たな面が見えてくるはずです。さらに,「援助付き『できる』」で捉えることによって,周りの支援者のパフォーマンスを変えることができます。たとえば,「Aくんは歯磨きができる」という情報があるとします。実際に洗面台の前に立ったAくんに対して,支援者は見守っているだけでよいかもしれないし,一つずつの工程をイラストで描いた手順表を準備した方がよいかもしれません。加えて,歯磨きは終わったあと支援者が磨き残しがないか確認をする必要があるかもしれません。情報の受け手である支援者は行動を引き出すために試行錯誤が必要になるわけです。結果として,うまく行動を引き出せず,以前よりも過度な支援をすることもあるのです。そこで,「最後に支援者の仕上げの確認があれば,歯磨きをすることができる」という「援助付き『できる』」の情報があれば,支援者はどうやってAくんの行動を引き出すかが分かります。また,その情報をもとにさらに新たな環境設定を見つけ出すこともできるかもしれません。Aくんにとっても,新たな「できる」につながるのです。

「できる」の発信者としての立命館学生ジョブコーチシステム

大学内の模擬店舗を活用して,障害のある個人のこうした「できる」を見つけ出して拡大していこうと取り組んでいるのが,立命館学生ジョブコーチシステムです。大学内の模擬店舗では,徹底的に構造化して対象生徒の行動に影響する要因を操作することができます。対象生徒がどのような環境があれば能力が最大限に発揮できるか見つけるためにいかようにも環境設定をカスタマイズできるのです。お客さんが矢継ぎ早に来たときの行動や想定外の質問をされたときの対応,後輩となるスタッフが入ってきて教える立場になったときの振る舞いなどいろんな場面を設定して,対象生徒の「できる」を積極的に見つけることができます。

「できる」の受け手としての学校現場

「できる」の書式をどんなものにするのか,伝達方法はどうするのか,その答えは「できる」の受け手のパフォーマンスが教えてくれます。新しい「できる」を見つけても,受け手にうまく伝わらなければ意味がありません。受け手が「できる」の情報を得て,実際に援助を試す行動が出現してこそ「できる」がつながったといえます。うまく情報を活かせない場合,受け手が悪いというわけではありません。ここで,受け手の行動も「できる」で表現することができるのです。受け手にとって,「できる」を試したくなるような設定は何か,どんな結果が得られれば「できる」を試す行動を維持されるのか,その環境設定の検討を進めています。さらに,学校現場の支援者が受け手という役割だけでなく,「できる」を見つけ出す発信者になるように,「できる」を見つけ出して蓄積するシステムの構築についての検討も必要となっています。

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