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不登校・ひきこもりプロジェクト『さよなら不登校・こんにちは脱学校』の理論化にむけて

筆者: 北村真也(認定フリースクール「知誠館」代表) 中村正(応用人間科学研究科・産業社会学部) 執筆: 2016年1月

不登校経験者のキャリア形成の課題

 いじめ・不登校・ひきこもりといった困難を抱えた若者たちのキャリア形成は、その困難を克服するのに十分な準備ができてない発達段階における挫折体験からのキャリア形成だと位置付けられる。ここには特別な支援論が要請される。若者たちがそのキャリアを獲得するには、彼ら/彼女ら自身の中にどのような形で変容を生じさせ、しかもそれを促進させるシステムをどう構築するかという課題がある。さらに、キャリアパスへとつながる変容を生じさせるためには、一方で不登校経験者の痛みを受容し、ケアを提供しながらも、他方でその困難を克服するための能動性やレジリエンスを獲得するための支援が必要となってくる。不登校・ひきこもり問題の様相の変化(長期化・高齢化)をうけて、思春期青年期挫折や自立課題を前景化させた立論に依拠した支援論とそれにもとづく実践だけでは問題の解決に向かうことが困難になっているという認識をもとにした実践的研究をすすめた。本研究では、現在不登校やひきこもりを経験した若者たちが学ぶ、京都府教育員会認定フリースクールにおける実践を踏まえながら、困難を抱えた若者たちが再び学校や社会へと包摂されていくための、複線的なキャリアパスの形成過程の理論化とその成果の可視化を行うことを目標とした。困難を抱えた若者たちのキャリア形成を「セカンドキャリア形成」と位置付け、従来の定型的なキャリア教育やキャリア支援ではなく、若者たちの再学習や変容を意図したシステム構築を前提とし、個別の状況に応じた複線的なキャリアパスの成立を目指した。

認定フリースクールとの連携で

 研究プロジェクトの具体的な連携先(学=実連携)は、京都府内に六カ所ある「認定フリースクール」のひとつグローバル教育研究所が運営する「知誠館」である。具体的にはセッション・グループを企画、開催した。困難を抱えた若者たちの語りの場「森の語り場」を8回開催した。若者たちが、自己のライフストーリーを語ることを通して、苦しかった過去を自分自身のキャリア形成の機会へと書き換えていくことができた。さらに、そこで表現される個人の物語を、エピソード分析の手法を用いて記録した。ここでは、若者たちの痛みを受容し、そこから複線的なキャリアパスの構築に必要な能動性やレジリエンスを獲得できるような変容を生じさせることを目的とした。援助者と若者たちのための学びの場「ラウンドテーブル」を開催した(4回)。特に、公開ラウンドテーブル(2015年3月8日立命館大学にて開催した)では90名近い参加があり、とくに8名の不登校経験者が自らのキャリア形成へのニーズを語る場面やその保護者がそれを聞いて成長を実感した場面等を含めてこの総体の取り組みをもとにして冒頭のような不登校経験者固有のキャリア形成論の構築のための手がかりを得た。

さよなら不登校、こんにちは脱学校という理論化へ

 それは学習支援論として体系化すべき諸論点である。経験者の語りや家族の意識変化をもとにすると、不登校という定義のもつ不合理さ、しかし学習者としての自己を維持し、キャリアへとつながる機会の不足、そして支援者のもつパターナリズム的な一面化等が浮かび上がった。研究としては持続させていくが、これを対人支援として継続させていくための組織が必要であると判断し、この研究会の成果をもとにして、一般社団「さよなら不登校」を発足させ、法人登記した。さらに「こんにちは脱学校」を接ぎ木して実践を継続していく場としたい。 

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