01 発達支援チーム

リーダー:竹内 謙彰(産業社会学部教授)
 発達支援チームは、人間の発達上の様々な困難に関わって、その実態と支援のあり方を、広い意味での「発達支援」という視点からとらえることを共通のテーマとして発足したプロジェクト・チームです。フィールドは、学校、家庭、地域、専門機関などに及び、子どもだけではなく、大人の発達も視野に入れた調査・研究を進めています。現在は、五つのサブ・プロジェクトのもとで、それぞれ以下のテーマを掲げて研究を継続しています。各サブ・プロジェクトのテーマは以下の通りです。
 (1)「不登校・引きこもりへの包括的支援」、(2)「様々な困難を抱えた人への発達支援」、(3)「成人初期の多重役割への適応」、(4)「発達の基盤形成を担う場としての幼児期のなかま遊びの成立の解析」、(5)「関わりに難しさを抱える子どもへの発達支援」。
 それぞれのサブ・プロジェクトは、独立した研究・実践活動を行いつつ、発達支援という共通のテーマで連携・協力しあいながら、研究活動を進めていきます。
チーム参加メンバー 所 属 ・ 職 名 専 門
高垣 忠一郎 応用人間科学研究科・特任教授  
春日井敏之 文学部・教授 臨床教育学、自己変容、相互性
山本耕平 産業社会学部・教授 精神保健福祉、青年期、侵入的できごと
櫻谷眞理子 産業社会学部・教授 生涯発達心理学・児童福祉臨床、社会学
宇都宮博 文学部・准教授 生涯発達、ライフコース、結婚・夫婦、家族システム
高木和子 文学部・名誉教授  
荒木穂積 産業社会学部・教授 発達心理学
竹内謙彰 産業社会学部・教授 自閉症スペクトラム、発達障害

2010年度活動報告
 引きこもり支援領域では、以下のような活動を展開した。京都市から調査依頼(テーマ:ひきこもり状態にある若者に対する訪問支援の試行的実施を通した効果検証および具体的支援方法を確立するための調査研究」)を受け実施し、現在報告書作成中である。また大阪障害者センターとの共同研究により、障害者福祉現場労働者のメンタルヘルス調査を行った。この報告書も現在作成中である。その他、韓日のひきこもり比較研究を行い、韓国調査及び韓国サンミョン大学の李インス―教授との我が国でのインタビュー調査を実施した。その報告は2011年3月発刊予定の産業社会学学会「産社論集」に「ひきこもり支援の哲学と方法をめぐって―若者問題に関する韓日間比較調査から― 第1報」として投稿(掲載決定)している。
 成人期の発達研究領域では、「成人期の発達研究」に関する図書での分担執筆(概説および夫婦関係に焦点化したもの計2件)、「乳幼児をもつ有配偶者を対象とする親役割への適応と夫婦関係」に関するオンライン調査、「親役割をめぐる相互調整と夫婦関係」に関する企画の開催(日本発達心理学会第22回大会自主ラウンドテーブル)を行った。
 自閉症スペクトラム児への支援領域では、例年行っている自閉症スペクトラム児の療育活動「あひるくらぶ」を今年度も継続して行ってきた。また学術振興会のアジア・アフリカ研究基盤整備事業とも連動しながら、発達障害児とその家族のニーズに関わる質問紙調査の分析を継続し、その一端を日本保育学会で報告し、また3月にも発達心理学会で報告する予定である。さらに親のニーズを捉えるため、インタビュー調査を行い、現在その分析を進めているところである。
 不登校支援の領域では、立命館宇治中学校高等学校、立命館守山中学校高等学校、近江兄弟社高等学校単位制課程にて、毎月1回不登校など学校不適応生徒への支援を検討する「HAT会議」、「コンサルテーション会議」、「事例検討会議」にスーパーバイザーとして参加してきた。また東大阪市教育センターにて、不登校児童生徒への支援を検討する事業等にスーパーバイザーとして参加してきた。
 幼児におけるわかりあいのコミュニケーション領域では、2010年7月18日、9月8日、11月20日および2011年1月23日の4回にわたり時間をとった研究会を行い、これまでのデータをまとめた報告書を作成した。
 様々な困難を抱えた人への発達支援の領域では、被虐待児への施設ケアについての研究を行った。児童養護施設や情緒障害児短期治療施設の子どもや職員を対象に、「問題行動」の実態やそれへの対応について聞き取り調査を行った。さらに、サインズ・オブ・セイフティ・アプローチによる子どもたちとの創造的な話し合いのツールや「安全の家」づくりのプロセスを学び、実践研究を行うための準備を進めた。
 なお発達支援チーム全体では、2010年12月21日に研究会を行い、自閉症スペクトラム児の親のニーズに関する聴き取り調査研究の報告が行われたほか、チームの研究の進め方についての意見交換がなされた。

2011年度活動報告
 思春期・家族プロジェクトでは,困難を有する子ども・若者の総合的支援について実践及び研究を行っている.家族の貧困をはじめとする諸問題が,困難を有する子ども・若者の発達上の課題となり結実していることがある為,児童養護施設入所児のさまざまな虐待や不適切な養育と発達の危機及びサインズ・セイフティ・アプローチに関する研究を進めてきた.その結果は,「児童養護施設における生活指導・援助の課題」として報告を行った.また,内閣府の困難を有する子ども・若者の支援者調査企画分析会議委員として,全国の困難を有する子ども・若者支援の支援者を対象とした調査を行った.この結果は,内閣府HPで公表すると共に各自治体や支援機関,行政に報告書を配布する.また,ひきこもりの若者を対象としたインタビューを実施し報告書を作成した.さらに,韓日若者支援に関するシンポジウムならびに青年の親世代の夫婦関係をテーマとするワークショップなどに取り組んだ.
 発達障害児・家族プロジェクトの研究チームは、関わりに難しさを抱える子どもならびに家族の抱える困難に関わって,その具体的なニーズと支援のあり方を,発達支援の視点から捉えて実践的な研究を行うことを企図して発足したプロジェクトである。フィールドは、学校、家庭、地域、専門機関などに及び,また,中国やベトナムなど諸外国の研究グループとの交流も位置づけている。本プロジェクトでは,今年度,主として,①関わりに困難のある子ども(幼児,児童,青年を含む)の療育活動の継続,②特別なニーズを抱える子どもとその家族に対するニーズ調査(これについては,産社論集に質問紙調査研究の成果を論文として掲載したほか,アジア太平洋自閉症会議(APAC)ならびに日本特殊教育学会大会にて報告した),③発達障害児・者の生涯発達を見越した支援に関する研究(これについては,日本発達心理学会にて報告する)などに取り組んできた。